被害回復訴訟
【2025年3月7日:掲載】
ONE MESSAGE等に対する情報商材被害事件の共通義務確認訴訟の判決を受けて
~消費者機構日本の請求が全面的に認められました~
令和7年(2025年)2月28日、東京地方裁判所は、特定適格消費者団体である消費者機構日本が、消費者裁判手続特例法に基づき、2019年4月、いわゆる情報商材被害事件につき、不法行為を理由として売主会社及び勧誘者個人を被告として、売買代金相当額について損害賠償義務があることの確認を求めて提起した共通義務確認訴訟(以下「本件訴訟」)について、当機構の請求を全面的に認める判断(以下「本判決」)を示した。
消費者裁判手続特例法は、多数の消費者が同様の被害を受けた事案において、特定適格消費者団体が被害者に代わって、事業者に対し訴訟提起することにより、とりわけ個々の消費者が被害回復を求めることが経済的・手続的に見合わない事案においても、集団的な被害回復を可能としたものである。
本件の情報商材については、Webサイトにおいて、暗号通貨で、誰でも、簡単・確実に多額の利益が得られるこれまでにない手法を紹介するという趣旨の説明・勧誘がなされたものであるが、実際の内容との間に著しい齟齬があることから、このような説明・勧誘は違法であって、その違法性は、Webサイトを見て購入した被害者全員に共通であることから、まさに、特例法による救済に適するものといえた。
本件訴訟は当初、東京地方裁判所において、本件事案は個々の消費者ごとに相当程度の審理を要するから特例法の訴訟要件である「支配性」を欠くとして訴えが却下され、控訴審でも同様の判断が示されたが、最高裁判所は、「支配性」に欠けるところはないとして控訴審判決を破棄し、本件訴訟を東京地方裁判所に差し戻した。本判決は、差戻審における判断である。
差戻審において、被告らは、①当機構が虚偽または著しく誇大な勧誘だと指摘したWebサイトから購入した消費者の数について、特例法の要件である多数性の立証がない、②勧誘者個人について、本件の情報商材の宣伝をしただけで、特例法のいう「勧誘をする事業者」等に該当せず、被告適格がない、などと主張して訴訟要件を争うとともに、③説明・勧誘時の説明と実際の商品との間に齟齬はない、説明・勧誘時の商品価格の説明は顧客の判断を誤らせるものではないなどとして不法行為の成立を否定した。
これに対し、本判決は、①訴訟要件について、多数性に欠けることはなく、また、②勧誘者個人については、消費者の契約締結の意思形成に直接影響を与える程度に購入を働きかけているとして被告適格に欠けるとところはないとした。③不法行為の成否については、被告らのWebサイトによる説明・勧誘は、商品の内容について著しく事実に相違する表示をし、その性能を社会通念上許容される範囲を超えて著しく誇張して行われたのであるから不法行為法上違法であるとして、不法行為の成立を認めたものである。
本件訴訟は、当機構が2019年4月に提訴してから、ほぼ6年の歳月が経過しており、被害救済の観点から、これ以上の時の経過は許されるものではなく、被告らは本判決を真摯に受け止め、返金を求める者に対して、速やかに応じるよう強く要望するものである。
2025年(令和7年)3月4日
特定適格消費者団体 特定非営利活動法人 消費者機構日本
代表理事 副理事長 佐々木幸孝
参考資料
これまでの経過
- 2019年04月26日
- 株式会社ONE MESSAGEおよび泉忠司氏を東京地方裁判所に提訴(平成31年(ワ)第11049号)
- 2021年05月27日
- 株式会社ONE MESSAGE等に対する共通義務確認訴訟 控訴のご報告(令和3年(ネ)2677号)
- 2022年01月07日
- 株式会社ONE MESSAGE等に対する共通義務確認訴訟 控訴審判決のご報告
- 2024年01月15日
- (株)ONE MESSEGE共通義務確認訴訟 最高裁判所で口頭弁論が行われます。
- 2024年03月13日
- ONE MESSAGE共通義務確認訴訟 最高裁判所の判決を受けて