消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

申入れ・要請等

株式会社アイダ設計(建築請負事業者)の建設工事請負契約書の是正協議を終了しました。

 消費者機構日本は株式会社アイダ設計(埼玉県さいたま市)に対して、当該事業者が使用する建設工事請負契約書にある①解除に伴う違約金条項、②裁判管轄条項、③瑕疵に伴う契約解除条項につき、是正を求めました。

注) 当機構が是正の申入れ等を行っていないその他の条項については、問題の有無について判断しておりません。

 当該事業者からは、当機構の申入れ及び問合せの内容を受け入れて、建設工事請負契約書を改定するとの回答書を受領したことから、本協議を終了しました。

 当該事業者は、改定後の工事請負契約書・約款を2015年8月1日から使用を開始しています。

 当機構が申入れ及び要請した内容と当該事業者の回答及び改定後の工事請負契約約款における条項は下記【表】のとおりです。

 なお、本件につきましては、合意書を締結【合意書2016年8月3日】して協議を終了しました。(諸般の事情により、合意書締結までに時間を要しています。)

【表】
下表記載の甲・乙は、建設工事請負契約書における注文者・請負者です。
  消費者機構日本の申入れ・問合せ内容 アイダ設計の回答・工事請負契約書の改定状況
申入れ事項①
  1. ○下記条項は、請負代金を現金で支払う注文者については、請負代金額の20%程度を手付金および中間金として徴収するとの回答により、本条項1は、注文者が確認申請前後に契約を解除する場合および注文者の債務不履行により事業者が解除する場合、必ず請負金額の20%を支払う旨の解除に伴う違約金を定める条項ということになります。そのため、注文者が契約を解除する際の賠償額について、事業者に生じる平均的な損害の額を超えて定めているものであり、消費者契約法第9条1号に該当します。よって、第7条1項ないし3項を内容とする意思表示を行わず、また契約書面からこれを削除することを求めます。
  1. ○第7条を注文者からの解除権の条項として下記条項に改定し、事業者の解除権について、新たに第8条で整備します。

改定前の第7条
甲及び乙は、本契約の建物の引渡までに次の各号に定める場合本契約を、解除する事が出来るものとします。

  1. 乙が本契約の履行に着手する迄に、甲が本契約を解除する場合には、甲は手付金及び中間金を放棄する事により、本契約を解除する事が出来るものとします。又履行の着手の時期については、工事所在地の確認申請時とします。
  2. 乙が本契約の履行に着手した後、甲が本契約を解除する場合、手付金及び中間金を放棄するものとし、その金額が請負価格の20%、若しくは実質損害金に満たない時甲は、乙に別途不足分を支払うものとします。
  3. 甲の債務不履行により乙が期限を定めた履行の催告後、本契約を解除する場合、甲が乙へ支払済みの手付金及び中間金を没収する事とします。その金額が請負価格の20%若しくは実質損害金に満たない時甲は、乙に別途不足を支払うものとします。
改定後の第7条〔甲の解除権〕
  1. 甲は、工事完成前においては、乙に対し書面をもって通知して、工事の中止し、又は本契約を解除することができます。但し、これにより生じる乙の損害を、全て甲が賠償するものとします。なお、損害の詳細は乙が書面にて甲に提示します。
  2. 融資利用による契約解除については、第17条〔特約条項〕3.(融資利用の特約)に記載の通りとします。
改定後の第8条〔乙の解除権〕
  1. 乙は、甲が次の各号の一にあたるとき、本契約を解除することができます。
    1. ①甲が本契約に違反し、本契約を継続することができなくなったと認められるとき。
    2. ②甲が請負代金の一部を支払うことが不可能となり、本契約を継続することが出来なくなったと認められるとき。
  2. 本条により本契約が解除された場合、甲が工事の出来高部分及び工事材料を引き受けるものとし、甲乙は協議して精算するものとします。
申入れ事項②
  1. ○下記条項が、そこでしか第1審の裁判が認められない専属的合意管轄を規定するものであるとすれば、消費者の権利を一方的に制限するものです。よって、消費者契約法第10条に該当し、無効であり削除を求めます。

改定前の第12条
 本契約及び本契約に基づく取引に関する訴訟については、東京地方裁判所を管轄裁判所とします。

  1. ○左記条項は削除します。
問合せ事項① ○下記の条項につき、第8条2項なお書は、本物件の瑕疵について修補の請求以外、損害賠償の請求等できないと定め、完成前であれば消費者に著しく不利な規定となります。
同9条1項は、建物の瑕疵につき、担保責任を負うと定めています。
 上記2つの規定に関して、両者の射程はどのような関係なのでしょうか。
  1. ○第8条2項は建物完成前かつ引渡し前の規定で、第9条1項は完成後引渡し後の規定です。
改定前の第8条[完成検査]
  1. 検査の結果、工事に瑕疵があった時は、甲はその瑕疵を相当の期限を定めて修補の請求ができるものとします。なお甲は乙に対し本物件の瑕疵について修補の請求以外、本契約の無効及び本契約の解除、損害賠償の請求等できないものとします。
改定前の第9条[瑕疵担保責任]
  1. 乙は甲に対し、本契約の建物に瑕疵につき原則として、引渡し後2年に限りその担保の責任を負うものとします。(以下、略)
  1. ○第8条を全面的に削除します。