消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

差止請求訴訟

2012年11月5日 裁判上の和解で終結した案件

株式会社ワールドアベニューに対して、本日、差止請求訴訟を提起しました!
適格消費者団体「消費者機構日本」としては、第二号目となる差止請求訴訟です。

 消費者契約法に基づく適格消費者団体に認定されている「消費者機構日本(以下「当機構」という。)」は、2011年9月14日午前、留学あっせん事業者の「株式会社ワールドアベニュー(以下「当該事業者」という。)」に対する差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起しました。また、同日、午後4時からは、本訴訟に関する記者説明会(消費者庁会見室で開催)を開催しました。

 つきましては、消費者の皆様へ、その訴訟において差止請求を行った内容等をお知らせいたします。

I.差止請求した内容

1.差止対象条項
当該事業者が定めている次の「契約解約時の取消料の設定(申込金の返還取り扱い)<※>」について差止を求めました。

<※>…当該の取消料の設定は、当該事業者が定め、契約書面に付帯している海外留学プログラム約款の「契約後の取消と返金」条項の一部です。

契約を取消した場合には、契約日から経過した日数に応じて、以下のとおり申込金から取消料を支払う。

  1. ①契約日から起算して8日目以降で19日目以内の取消
    A/B/C は取消料105,000円  D/E/Fは取消料31,500円
  2. ②契約日から起算して20日目以降で29日目以内の取消
    A/B/C は取消料210,000円  D/E/Fは取消料42,000円
  3. ③契約日から起算して30日目以降の取消
    A/B/C/D/E/Fともに申込金全額が取消料

★上記のA/B/C/D/E/Fは当該事業者が消費者と契約する留学あっせん契約のプログラム区分で、その内容及び申込金の額等は次頁の参考資料を参照ください。

2.差止請求内容

(1) 当該事業者が消費者との間で留学あっせん契約を締結するに際し、上記1記載の意思表示を行ってはならないこと。また、上記1記載の意思表示を内容とする条項が印刷された契約書用紙を破棄すること。

(2) 当該事業者の従業員らに対し、上記1記載の意思表示を行ってはならないこと及び同記載の契約書用紙を破棄すべきことを周知・徹底させる措置を講ずること。

<参考資料>: 当該事業者の留学あっせん契約のプログラム区分と申込金と取消料の額等について

プログラム区分と内容 申込金 取消料(契約日から起算して)
8~19日目 20~29日目 30日目~
取消料の額 申込金に
対する割合
取消料の額 申込金に
対する割合
取消料の額 申込金に
対する割合
A 中学校・高校・短大・専門・大学・大学院留学等のプログラム 210,000
~315,000
105,000 33%
~50%
210,000 67%
~100%
申込金全額 100%
B 海外インターンシップのプログラム 105,000
~367,500
29%
~100%
57%
~100%
C 看護師資格取得のプログラム 315,000 33% 66.6%
D 長期語学又は学生ビザ対象の語学研修・専門学校留学(1年未満)のプログラム 94,500
~126,000
31,500 25%
~33%
42,000 33%
~44%
E PADIダイビングインストラクターのプログラム 約款上不明 不明 不明
F ワーキングホリデー・観光ビザ対象の短期留学のプログラム 52,500
~105,000
30%
~60%
40%
~80%

II.差止請求訴訟提起までの経過概要

1.当機構は、消費者からの情報提供を踏まえ、当該事業者の契約書面及び付帯している「海外留学プログラム約款(以下「本件約款」という。)」等を検証した結果、消費者契約法に反する条項(※下記参照)、等について、2010年5月17日付け及び同年8月9日付けで裁判外の申入れ(改善申入れ)を行いました。
<当初の、条項に関する改善申入れ概要>
※サービスの対価に相当する金額でもある申込金について、「契約締結後は、一切不返還とする定め(情報提供に基づく約款)」は、当該事業者のサービス提供の結果とは無関係に高額の違約金等を設定する不当条項であることからその是正・改善を求める。

2.この申入れに対して、当該事業者は同年12月に改善がはかられ、「契約締結後の解約に伴う、取消料の設定(申込金の返還取り扱い)」も今回の差止請求の内容(前記I)へ緩和されました。その内容は前記Iのとおり、「画一的に、契約締結日から起算して取消料(申込金からの充当)を設定し、30日目以降には申込金全額を取消料とし、申込金が返還されないとする」ものでした。

3.しかし、当該事業者が提供するサービス内容からすれば、本来、契約解約時の当該事業者の損害は、留学先決定の時期、留学先決定後もサービス履行状況により異なるにもかかわらず、単純に契約締結日からの経過日数によって申込金の一部または全部を取消料として徴収するのは、平均的損害を超えた違約金等を定めるものであり、消費者契約法第9条1号に該当する不当条項です。
 このため当機構では、当該事業者における同年12月の改善内容を一旦、中間的に公表しながら、その改定内容等を検証し、この間、「契約締結後の解約に伴う、取消料の設定(申込金の返還取り扱い)」に関するさらなる改善を引き続き求めてきましたが、当該事業者からは改善回答を得ることができず、今回の差止請求訴訟に至ったものです。

記者説明会の様子
~記者説明会の様子~