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イベント等

第32回消費者志向経営セミナー 「消費者法制の基礎セミナー」の開催報告

 当機構では2021年12月7日(火)に「消費者法制の基礎セミナー」と第32回消費者志向経営セミナーを開催いたしました。

 講師は昨年と同様に当機構理事で弁護士の瀬戸和宏さんと同じく理事で消費生活相談員の大谷聖子さんにお願いしました。

 瀬戸和宏さんからは、消費者法制の概要、消費者契約法の解説と消費者団体訴訟制度について、先生の思いも含めてお話しいただきました。

 また大谷聖子さんからは、地方消費者行政の現況、消費生活相談員の業務、2020年度の相談の傾向と特徴、事業者への要望等についてお話しいただきました。

 受講者の皆様からは「具体的な事例を示した説明でわかりやすかった」「最近の相談動向が理解でき参考になった」等、好評でした。

1.テーマ
消費者法制の基礎を学ぶ
2.日時
2021年12月7日(火)13時30分~17時00分
3.会場
Zoomによるオンライン受講と主婦会館プラザエフ5階会議室
4.参加費
お一人様 5,000円
5.対象者
企業・団体の法務部門、内部統制部門、コンプライアンス部門、顧客対応部門、消費者契約担当部門等の新任担当者、消費者法制の基礎を学習したい方
6.参加者
10名(オンライン8名、実出席2名)

7.タイムスケジュールと内容

時間 内容
13:35~16:00 講義1 消費者法制の概要・消費者契約法の解説と消費者団体訴訟制度
講師:弁護士 瀬戸 和宏 氏(日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会幹事、千葉大学大学院専門法務研究科 非常勤講師)
〇消費者法制の概要
〇消費者契約法の解説と消費者団体訴訟制度
16:20~17:00 講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望
講師:消費生活相談員 大谷 聖子 氏(港区立消費者センター)
〇2018年度の消費生活相談の傾向と特徴
〇事業者への要望

8.講義内容

(1) 講義1 消費者法制の概要・消費者契約法の解説と消費者団体制度について
 消費者法という名称の法律は無いが、「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差」の存在が立法的解決を要請し、歴史的背景や価値観の変化に応じて、新たな法律が制定され、改正が行われていること。消費者基本法の改定観点は、「保護」から「自立の支援」に変わってきたことなど、消費者庁が所管する37の法律の条文を参照しながら説明された。
 消費者契約法の説明では、消費者像を説明し、消費者契約法の変遷について、主な条文の解説と具体的な事例の紹介がありました。平成30年と令和元年の第2次改正と今後の第3次改正の内容についての解説もあった。
 消費者団体訴訟制度の説明では、制度の説明と適格消費者団体や特定適格消費者団体がこれまでに行った「差止請求事例」や「被害回復事例」についても紹介があった。
 最後に先生が考える「消費者志向経営」について、三方よし(「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」)の経営をすることが重要であると話された。

(2) 講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望について
 地方消費者行政の現況、年度別の消費生活相談件数の推移、2020年の消費生活相談の傾向と特徴について説明し、相談件数は2004年の192万件をピークに、2008年以降は90万件前後で推移している。
 2020年は93万件となり、架空請求は減少したもののコロナ関連の架空請求以外の相談件数が増加した。新型コロナ関連の相談は2020年4月で2万1千件まで増えたが、年度の後半は3千件前後で推移している。販売購入形態別では「通信販売」の相談が増加し、「店舗販売」、「電話勧誘販売」は減少している。また、SNSが関連した相談も増加している。この傾向はしばらく続くとの説明があった。
 最後に、消費者基本法における事業者の責務である「苦情を適切かつ迅速に処理すること」や、お客様相談担当者が知っておいて欲しい事業者への5つの要望として、消費者関連法の熟知や消費者からの申出の真意を汲み取ることが大切であると話された。