消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

差止請求訴訟

スタディーリフォーム(事業者名 株式会社ケイツウ‐家庭教師派遣業)に対する差止請求訴訟を和解をもって終了しました。

 消費者機構日本は、株式会社ケイツウ(神奈川県横浜市)に対して、当該事業者が運営するスタディーリフォームの中学受験を目的とした家庭教師派遣契約において、2015年9月17日に差止請求訴訟を提起していました。差止請求の対象としたのは下記趣旨の条項です。

  1. ①中学受験終了時を終期とする家庭教師派遣契約であるにもかかわらず、書面による通知がない限り自動更新とする条項
  2. ②月謝等の遅延損害金について消費者契約法規定を超える利率を定めた条項

 訴訟提起後、当該事業者は当機構の差止請求事項を認め、契約書の改定を行ったため、早期の和解となりました。改定された契約条項は、次の通りです。

  消費者機構日本の差止事項 ケイツウの改定後条項
差止請求事項①
  1. 〇期間の定めがあるにもかかわらず、消費者が書面により契約更新をしない旨の意思表示をしない限り契約は自動更新されるものとして消費者の更新の意思表示を擬制し、受講料等の支払いを強いることとなる本条項は消費者の義務を加重するものであって、更新の意思表示を擬制されることによるメリットは消費者にはなく、事業者による個別の意思確認が決して過剰な負担を強いるものではないことからしても、本条項は消費者の利益を一方的に害するものです。よって、下記条項のうち下線部分は、消費者契約法第10条により無効ですので、削除を求めます。
〇下線部のように条項を改定。
3.契約の更新
契約の更新は、1年ずつとします。契約更新の際には、会員は新たに教務管理費をスタディーリフォームに対して支払うものとします。
契約の更新を希望しない会員(退会を希望する会員)は、最終指導月の前月末日までに書面にてその旨をスタディーリフォームに通知するものとします。
書面の通知無く指導を中断している期間は、休会扱いとなり契約は自動更新されます。
3.契約の更新
契約の更新は、1年ずつとします。契約更新の際には、会員は新たに教務管理費をスタディーリフォームに対して支払うものとします。
契約の更新を希望しない会員(退会を希望する会員)は、最終指導月の前月末日までに書面にてその旨をスタディーリフォームに通知するものとします。
書面の通知無く指導を中断して契約期間満了を迎えた場合、契約は自動的に解約となります。
9.休会・退会
  1. ①休会・退会日は月末とします。
  2. ②休会・退会を希望する会員は、指導の終了を希望する月の前月末日までに、書面にてその旨をスタディーリフォームへ通知するものとします。
  3. ③契約期間が定められている場合でも、会員から退会の連絡が無い場合、スタディーリフォームは契約を自動更新することができます。
9.休会・退会
  1. ①休会・退会日は月末とします。
  2. ②休会・退会を希望する会員は、指導の終了を希望する月の前月末日までに、書面にてその旨をスタディーリフォームへ通知するものとします。
  3. ③契約期間が定められている場合、期間満了をもって自動的に解約となります。
差止請求事項②
  1. 〇下記条項は、入会諸経費や月謝の支払い遅延について、「1日につき0.05%」の遅延損害金を定める内容となっていますが、これを年利にすると18.25%の遅延損害金となります。消費者契約法第9条2号では、「年14.6%の割合を乗じて計算した額を超えるもの」は無効となっており、明らかに消費者契約法第9条2号に抵触しているため、削除を求めます。
  1. 〇下線部のように条項を改定。
15.支払遅延損害金
会員は、入会諸経費や月謝の支払いを支払期限より2週間以上遅延した場合、支払期限に遡り1日のつき0.05%の遅延損害金をスタディーリフォームに対して支払うものとします。
15.支払遅延損害金
会員は、入会諸経費や月謝の支払いを支払期限より2週間以上遅延した場合、支払期限に遡り年利14.0%の日割り遅延損害金をスタディーリフォームに対して支払うものとします。

差止請求訴訟に至る経緯

 当機構は、消費者からスタディーリフォームの家庭教師派遣契約において、不当な条項があるとの情報提供を受け、昨年(2014年)より当該事業者に対し、次のような申入れ(条項の差止)および要請等を行い、是正を求めてきました。

●申入れ事項①
自動更新条項
(中学受験・講師派遣契約期間終了後の自動更新、受講料徴収)
   申入れ事項②
遅延損害金について消費者契約法規定を超える利率を定めた条項
(契約条項0.05%/日=年18.25%‐法定利率年14.6%超)
   申入れ事項③
中途解約規定条項
(入会諸経費のうち、未受講分の返金規定整備)
   申入れ事項④
料金の詳細表示(ホームページ上での受講料項目の表記不足)
●要請事項①
クーリングオフの表示(クーリングオフ妨害事項の記述追加)
●要請事項②
休会・退会の届出方法
(休会・退会時の書面提出以外の意思確認方法の採用)
●問合せ事項
指導・合格実績の表示
(実績の根拠理由提示‐首都圏の中学入試で№1の合格実績など)

 詳細は、2014年12月22日付け「申入れおよび要請」をご覧ください。

【2014年12月22日付申入れおよび要請】

 しかし、上記申入れおよび要請に対し当該事業者は対応することなく、回答督促状への返答もありませんでした。その間にも首都圏の消費生活相談センターには、上記申入れ事項に関する相談が引き続き寄せられていました。当機構では消費者からの相談内容から、特に相談が多い中学受験終了時の自動更新条項を差止の対象としました。加えて消費者契約法に抵触する遅延損害金利率条項についても差止の対象とし、当該事業者に差止請求書を送付しました。

 詳細は、2015年9月4日付け「差止請求書」をご覧ください。

【2015年9月4日付差止請求書】

 上記差止請求書は、この内容について文書到達時から1週間経過すれば、訴訟を提起できるもので、消費者契約法第41条に定められた書面による事前の差止請求です。

 差止請求書送付後、当該事業者から9月15日に回答が到着しましたが、自動更新条項を変更する意思はなく、遅延損害金条項に関しては具体的な改定条項等が示されない内容であったため、当機構は9月17日に横浜地方裁判所に差止請求訴訟を提起しました。

【2015年9月17日付差止請求 訴状】

 提訴後、裁判所での第1回口頭弁論期日を迎える前に、当該事業者より上記①の自動更新条項を削除し、家庭教師派遣契約書の改定も行う旨の申し出があったため、和解の準備を進めてきました。横浜地方裁判所での第1回口頭弁論期日(11月19日)において、原告訴状陳述、被告答弁書陳述の後、改定した契約書の原本を確認のうえ、被告において原告提示の和解条項を受け入れることが確認され、訴訟上の和解が成立しました。

 詳細は、和解調書および当該事業者の改定契約書をご覧ください。

【2015年11月20日付和解調書】

【スタディリフォーム改定契約書】

 以上をもって、当機構は当該事業者との是正協議を終了しました。