申入れ・要請等
【2026年1月5日:掲載】
アーバネスト株式会社(総合建設業 総合不動産業)の居住用建物賃貸借契約書及び重要事項説明書が、協議を経て、改善されました。
消費者機構日本は消費者からの情報提供を受け、アーバネスト株式会社(東京都港区)に対して、当該事業者が使用する居住用建物賃貸借契約書及び重要事項説明書(以下本件約款という)について、「申入れ・問合せ」を行いました。
その結果、合意できない条項として、「第15条(明渡し)3項」があったものの、当機構の「申入れ」の趣旨に従い、概ね本件約款が改善されることになりましたので、見解の相違について意見を付し、協議を終了しました。
当機構の「申入れ・問合せ」内容と当該事業者の回答は以下の通りです。
1.合意に至った事項
| 消費者機構日本の申入れ等の内容 | アーバネスト社の回答 | |
|---|---|---|
| 申入れ事項① | <2023(令和5)年5月17日付> 【居住用建物賃貸借契約書 特約事項】 賃料を14日以上滞納し連絡無き時は、貸主は本件貸室内へ立ち入りができるものとする。 【申入れの趣旨】 特約事項における上記の条項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 上記特約は、消費者契約法10条に違反している蓋然性が高いと考えます。
|
<2023(令和5)年6月15日付> 削除します。 |
| 申入れ事項② | <2023(令和5)年5月17日付> 【約款13条(契約の解除・消滅)①】 乙及び同居人等が下記のいずれかに該当したときは、甲はなんら催告を要せず即時本契約を解除でき、その際乙は即時本物件を明渡し返還しなければならない。
約款第13条①の削除を申し入れます。 【申入れの理由】
|
<2023(令和5)年6月15日付> 削除します。 |
| 申入れ事項③(1回目) | <2023(令和5)年5月17日付> 【約款13条(契約の解除・消滅)⑥】 乙及び同居人等が下記のいずれかに該当したときは、甲はなんら催告を要せず即時本契約を解除でき、その際乙は即時本物件を明渡し返還しなければならない。
|
<2023(令和5)年6月15日付> 「後見・補佐・補助開始の審判を受け」の部分に関しては、消費者契約法平成30年改正に基づき、削除します。 後半部分の「破産、民事再生手続き」に関しては存続させる意向です。 理由は「破産、民事再生手続き」を受けた賃借人には資力を期待できず、賃貸借契約を継続することは貸主の負債を広げることになるからです。 「破産・民事再生手続き」の申し立ては、管轄裁判所に対して行うものであり、その時点で債務者には通常の生活を行う資力に欠ける状態であることが前提となります。 つまり、「破産、民事再生手続き」を行うということはその時点で資力に問題が生じているという状況にあり、民法第542条(催告によらない解除)1項5項の「債務者がその債務を履行せず、債権者が前条の催告をしても契約した目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」に該当すると思われます。 破産管財人等が選任されてからでは、家賃全額の回収が難しいことは明白であり、居住期間が長引くほど貸主の負担が重くなるという事を考慮し、速やかな解約・退去を求める所存です。 |
| 申入れ事項③(2回目) | <2023(令和5)年10月6日付> 【申入れの趣旨】 約款第13条⑥のうち、「会社更生、精算」を除いた条項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 最高裁昭和43年11月21日判決(事件番号:昭和42(オ)919)は、破産宣告を受けたときは,賃貸借を直ちに解除することができる旨の特約は、借家法1条の2の規定に反し、同法6条により無効とすべきであるとした原審の判断を正当としております。 借地借家法においても同様に考えられます。 そこで、消費者を賃借人として賃貸借契約の締結に当り、「破産、民事再生手続き」の条項については、削除を申入れます。 |
<2023(令和5)年11月16日付> 「後見・補佐・補助開始の審判を受け」ついては、前回の回答(2023年6月15日付)のとおり、消費者契約法平成30年改正に基づき、削除します。 後半部分の「破産、民事再生手続き」に関しては、前回の回答(2023年6月15日付)での弊社主張「存続させる意向」に加筆して、以下のとおり論拠を説明いたします。 賃借人(個人)が「破産」をしようとするとき、自己破産における「支払不能(破産法第15条1項)」を満たしていないと行うことができません。 「支払不能」とは、「借金の額、財産の額、収入・支出の額等」が総合的・客観的に判断されます。また、支払不能と認められるには、一時的に支払いができないのではなく、継続的に支払いが不可能であることが必要であります。 賃貸借契約の賃借人(個人)が破産すなわち支払不能の状態となったときは、現状居住家屋に住み続けることはほぼありません。 それは多くの方が「生活保護」を申請され、「住宅扶助額」の範囲内賃料で収まる物件に転居せざるを得なくなるからです。 つまり、賃借人が破産(支払不能)となると、賃貸人は賃貸借契約が解約されない以上家賃収入が望めない賃貸借契約の下に置かれることになり、生活に支障を来たしかねないことになるというのが実状です。 その意味からすると、最高裁判所判決第三小法廷(事件番号:昭和45(オ)210)の「家屋の賃借人が破産したことを理由として、賃貸人から賃貸借契約の解約を可能とした」判決は、賃借人・賃貸人の双方の利害のバランスが取れた妥当な判決と思われます。 |
| 申入れ事項③(3回目) | <2024(令和6)年1月26日付> 【申入れの趣旨】 約款第13条⑥につき、「後見・補佐・補助開始の審判を受け」のみならず、「破産、民事再生手続き」の条項の削除も求めます。 【申入れの理由】
|
<2024(令和6)年3月29日付> 削除します。 |
| 申入れ事項⑤(1回目) | <2023(令和5)年5月17日付> 【特約事項及び重要事項説明書20】 貸室設備等の故障・一部滅失した場合、貸主が速やかに修理・発注手配をしたにも関わらず、工事業者の部品調達等の事由により修理に日数を要する場合は、借主は家賃減額、その他の損害賠償等の請求はできないものとする。 【申入れの趣旨】 特約事項及び重要事項説明書20.における次の条項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 改正民法611条1項では、賃借物の一部が滅失したときは、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、当然に賃料減額の効果が生じる規定に改正されました。 この点、上記条項は、強行規定ではなく任意規定と解されており、特約により変更は可能とも解されますが、賃借物の一部滅失とはいえ、それが賃貸借の重要な部分であり、生活に重要な支障がある場合にも、特約により、損害賠償請求ができないものとするのは、消費者契約法10条に反し無効と考えられます。 消費者(賃借人)は、賃借物が一部滅失したときは、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、当然に賃料減額請求権を有していますので、上記特約及び重要事項説明書20.の規定は、消費者(賃借人)の権利を制限することとなるため、消費者契約法10条第一要件を満たすといえます。 また、賃借人の生活の基盤である賃借権につき、厨房、浴室、洗濯場などの賃借物の一部が滅失すれば、生活に重大な支障が生じることは明らかですので、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、賃料減額の効果を認められないとすれば、信義則に反して一方的に賃借人に不利益を課すもので、消費者契約法10条第二要件を満たすといえます。 従って、本条項は、消費者契約法10条により無効といえますので、本条項の削除を求めます。 |
<2023(令和5)年6月15日付> この条項は存続させる意向です。 まず改正民法第611条第1項の条項が任意規定であり、一部変更可能と解することができるという点については、そのように弊社も認識しております。 この条文に関しましては「公益社団法人日本賃貸住宅管理協会」の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」及び全国賃貸住宅新聞等を参照して作成しており、『貸主は修繕等について合理的かつ常識的な対応を取ることを前提としたものである』こと、前述した資料においても「免責期間の設定」は認められていること等を踏まえ、弊社としては消費者契約法10条に反し無効となるものではないと考えております。 また、同特約事項は「不可抗力の状態」で適用される事項であり、金銭債務以外の「民法第419条3項の反対解釈」より導き出されたものです。万が一、賃借物の一部が滅失して明らかに「生活に支障」が生じたときには、実務的には弊社は「居住用建物賃貸借契約書」第22条(規定外事項)、いわゆる協議事項で対応、解決しております。 |
| 申入れ事項⑤(2回目) | <2023(令和5)年10月6日付> 【申入れの趣旨】 特約事項及び重要事項説明書20.における次の条項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 貴社が、主張しているガイドラインは別紙(→クリックすると開きます。)のとおりであり、このガイドラインの方が、改正民法611条1項の趣旨に沿っておりますので、ガイドラインに準拠するという規定にすることを申入れます。 |
<2023(令和5)年11月16日付> この条項は下記のとおり変更します。 「貸室設備等の一部が滅失した場合、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が作成した「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」を参照し、甲乙協議の上、賃料減額等について決定する。尚、貸室設備等の一部が故障した場合、貸主が速やかに修理・発注手配をしたにもかかわらず、工事業者の部品調達等の事由により修理に日数を要する場合は、借主は減額請求、その他の損害賠償等の請求は出来ないものとする。」 |
| 申入れ事項⑤(3回目) | <2024(令和6)年1月26日付> 【申入れの趣旨】 特約事項及び重要事項説明書20.における次の条項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 貴社の条項は、消費者契約法10条により無効といえますので、削除を求めます。
|
<2024(令和6)年3月29日付> 貴機構より第3回目の「申入れ」資料で添付いただきました「貸室設備等の不具合による賃料減額ガイドライン(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会)」は弊社も確認・検討しております。 その結果、このガイドラインの「表(A群、B群)」は参考にはするけれど、賃貸借契約に取り入れる(添付して一体化)ことは止めることになりました。ガイドラインの「使用上の注意事項」にも明記されていますとおり、「あくまでも目安を示しているものであり、必ずしも使用しなくてはならないものではございません」という前提があります。 賃借人の「不具合による被害」に対する受け止め方は(被害者の意識)には個人差があり、いきなり「賃料を継続的に値下げして欲しい」と言ってきたり、部屋(専有部分)には住めない状況なので「一時的に過ごしたホテル代を負担して欲しい」などと突然、一方的に申入れてくることがあります。 また、「賃料減額割合」・「免責日数」を明確にすることがかえって消費費にとって不利益を与える可能性もあります。 ガイドラインの「使用上の注意事項」には、「但し、電気・ガス・水・設備等の供給元の責めに帰すべき事由がある場合や全壊等により使用・収益ができなくなった場合は、この限りでありません」との適用除外の項目も存在します。 弊社としましても、借主に対しての「貸主の義務(使用及び収益させる義務、そのための必要な修繕を行う義務)」は充分認識の上対応しております。 そのため、弊社は「貸室設備等の不具合」については協議事項とし、生じたときは個別対応して解決を図っています。 ご指摘の特約条項(重要事項説明書 20)は、ガイドラインを踏まえて次のとおり改定します。 「貸室設備等の故障・一部滅失した場合、貸主が速やかに修理・発注手配したにも関わらず、工事業者の部品調達等の事由により修理日数を要するときは、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会作成の<貸室設備等の不具合による賃料減額ガイドライン>を参考に、貸主・借主双方の協議により誠意をもって処理解決するものとする。」 |
| 改定前 【特約事項及び重要事項説明書20】 貸室設備等の故障・一部滅失した場合、貸主が速やかに修理・発注手配をしたにも関わらず、工事業者の部品調達等の事由により修理に日数を要する場合は、借主は家賃減額、その他の損害賠償等の請求はできないものとする。 |
改定後 【特約事項及び重要事項説明書20】 貸室設備等の故障・一部が滅失した場合、貸主が速やかに修理・発注手配したにも関わらず、工事業者の部品調等の事由により修理日数を要するときは、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会作成の<貸室設備等の不具合による賃料減額ガイドライン>を参考に、貸主・借主双方の協議により誠意をもって処理解決するものとする。 |
2.合意に至らなかった事項
| 消費者機構日本の申入れ等の内容 | アーバネスト社の回答 | |
|---|---|---|
| 申入れ事項④(1回目) | <2023(令和5)年5月17日付> 【約款15条(明渡し)3項】 乙は本件貸室の明渡しに際し、甲に対し移転料、立退き料等、その他名目の如何に拘わらず一切の金員を請求しない。 【申入れの趣旨】 約款第15条3項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 本条項は、甲の責めに帰すべき事由により、乙が本件貸室を明け渡さなければならなくなった場合にも、乙は甲に対して損害賠償請求や有益費償還請求権を行うことができなくなるのであり、民法に規定された(415条、709条、608条2項、196条2項)、損害賠償請求権や有益費償還請求権を奪うものであり、消費者(賃借人)の権利を制限することとなるため、消費者契約法10条の第一要件を満たすといえます。 また、賃借人の生活の基盤である賃借権を実質的に奪われたにもかかわらず、金銭賠償や償還請求ができないものであることから、信義則に反して一方的に賃借人に不利益を課すもので、消費者契約法10条の第二要件を満たすといえます。 従って、本条項は、消費者契約法10条により無効といえますので、本条項の削除を求めます。 |
<2023(令和5)年6月15日付> この条項には「但書」を加筆します。 弊社「居住用建物賃貸借契約書」約款第9条(禁止行為)3項にて「本物件の増改築、改造もしくは模様替え又は、本物件の敷地内における工作物の設置及び鍵の追加設置と交換」と定めており、乙の責めにより生じたものではない経年劣化や自然損耗等、通常使用の結果発生した不具合に対する修繕等については甲の負担により対応することとしています。 有益費償還請求は退去時に行われるものですが、契約期間中に修繕等の依頼連絡もなく、設備等の改造を行うことはそれ自体が契約違反であり、退去の際に初めて請求がなされるという事態は発生しないはずであること、有益費の償還請求権を予め放棄する特約が最高裁判決(昭和48(オ)1106号)により認められたことなどを考慮し、弊社としては申し入れがあった条文を「乙は本件貸室の明渡しに際し、甲に対し移転料、立退料等、その他名目の如何に拘わらず一切の金員を請求しない。但し、甲の責めに帰すべき事由もしくは都合により乙が退去することになった場合は除く」と文言を加筆することで対応します。 |
| 申入れ事項④(2回目) | <2023(令和5)年10月6日付> 【申入れの趣旨】 約款第15条3項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】 有益費償還請求権が任意規定だとしても、常に予め放棄することができるものと解することはできません。 すなわち、有益費の金額が多額であり、借家人が消費者の場合には、上述のように、消費者契約法10条により、有益費償還請求権を予め放棄することになる約款は無効といえますので、約款第15条3項の削除を申し入れます。 |
<2023(令和5)年11月16日付> まず、前回の回答で申し上げましたとおり、弊社は本条項については「但し、甲の責めに帰すべき事由もしくは都合により乙が退去することになった場合は除く」と文言を追記することで対応します。 貴機構よりの【申入れの理由】に「乙は甲に対して損害賠償請求や有益費償還請求権を行うことができなくなるのであり、」とございますが、損害賠償請求とは「甲の故意・過失に基づき発生した損害」に対して行われるものです。つまり、「甲の責めに帰すべき事由もしくは都合」を除いた追記文言の適用を受けるものであり、乙が損害賠償請求ができなくなるという事はございません。 また、有益費償還請求権についてですが、有益費とは、物を保存・管理するための「必要費」と異なり、物(今回の場合は物件)の「価値を増加させる行為」であり、弊社「居住用建物賃貸借契約書」約款第9条(禁止行為)3項の「本物件の増改築、改造もしくは模様替え又は、本物件の敷地内における工作物の設置及び鍵の追加設置と交換」に該当しますので、有益費が発生することはありません。 しかしながら、賃借人(居住者)から現状より性能を向上させる為の工作について要望を受けた際は、可能であるかを検討した上、有益費償還請求権を放棄することで賃借人(入居者)の要望を受け入れる場合もあり、このことは消費者契約法に反するものではありません。 尚、前述しました「必要費」に関しましては前回の回答にも記載しました「乙の責めに生じたものではない経年劣化や自然損耗等、通常使用の結果発生した不具合に対する修繕等」については甲の負担により対応いたします。 |
| 申入れ事項④(3回目) | <2024(令和6)年1月26日付> 【申入れの趣旨】 約款第15条3項の削除を申し入れます。 【申入れの理由】
|
<2024(令和6)年3月29日付> 約款第15条3項の文言は、実質的な「有益費償還請求権を予め放棄する」条項であります。 これは、第1回目の「回答書(2023年」6月15日付)」でもご説明しましたように、最高裁判所判決(昭和48(オ)1106号)で認められていることであります。 また、賃借人に有益費償還請求権を認める趣旨が不当利得の法理にあり、民法第608条が任意規定であることから、有益費償還返還請求権の全部を放棄することも可能であると解されています。 貴機構は、賃借人が「約款に違反する行為」をして、つまり、約款第9条(禁止行為)3項に違反して「本物件の増改築、改造もしくは模様替え」を行っても、「賃貸目的物の価値が客観的に増加している限りは、賃貸人が不当に利得していることになり、これを返還しなければならないのは、当然であると考えております」と主張されます。 しかしながら、この「賃貸目的物の価値が客観的に増加している限りは、賃貸人が不当に利得していることになり、これを返還しなければならないのは、当然であると考えております」という部分について同様の事例を弁護士が紹介した記事がございますが、「有益費償還返還請求権が賃借人に認められている場合」を前提としており、その点において貴機構と大きく異なります。 本件は、貴機構が削除を求めています「約款第15条3項」において「有益費償還請求権を賃借人に認めていません」ので、貴機構の主張は前提を欠いており失当であると申し上げます。 仮に、貴機構の主張をそのまま容認すれば、賃借人が約款第9条3項に違反し、賃貸人に無断で増改築・改造を行い、それに数百万円の費用がかかっても、それを賃貸人は返還しなければならなくなり、賃貸人はこの上ない賃借人の理不尽さを被ることになります。 この点を、消費者庁に確認したところ。「有益費償還請求権」を認めている民法第608条2項は、民法第1条(基本原則)2項の「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という、いわゆる「信義誠実の原則」を大前提としていますとの回答でした。この原則は、「社会の一員として、互いに相手方の信頼を裏切らないように、誠意をもって行動をしなければならない」という民法の基本原則の内の一つです。消費者庁の回答は、「司法の個別の判断もあるかもしれませんが」と前置きをして、この原則に反した「約款に違反する行為」をした賃借人の「有益費償還請求権」は消費者契約法も含め保護するに値しないとの見解でありました。 貴機構のこの条項が消費者契約法第10条の「消費者(賃借人)の権利を制限すること」及び「一方的に賃借人に不利益を課すもの」に該当するという主張に関しましては、上記で述べましたとおり「有益費償還請求権を予め放棄する」ことは最高裁判所が認めたことであり、消費者契約法第10条には抵触しないものと思われます。 尚、1回目・2回目の回答書にて申し上げましたとおり、「但し、甲の責めに帰すべき事由もしくは都合により、乙が退去することになった場合は除く」との文言を加筆改定する予定であります。 |
| 申入れ事項④(4回目) | <2024(令和6)年5月20日付> 乙は本件貸室の明渡しに際し、甲に対し移転料、立退き料等、その他名目の如何に拘わらず一切の金員を請求しない。 【申入れの趣旨】 約款第15条3項の改定を求めます。 【申入れの理由】 貴社の回答では、賃貸人の了承を得て有益費を支出し、本件貸室の退去当時において、賃貸物件の価値が客観的に増加していることが認められる場合であっても、有益費償還請求権を行使できなくなってしまいます。この点を勘案のうえ条項の改定を求めます。 有益費償還請求権を予め放棄する条項の削除を求めましたが、2024年3月29日付けのご回答においても、最高裁昭和49年3月14日判決の存在を理由に、つまり、同判決では、有益費償還請求権は任意規定であって、予め放棄する旨の特約は(旧)借家法第6条により無効であると解することはできないと判示していることから、今回も削除しないとの回答をいただきました。 しかし、消費者契約法は、上記最高裁判決の後、平成13年4月1日に民法の特別法として施行されたものであり、消費者契約である賃貸借契約において上記最高裁の解釈が妥当するものとは考えられません。 平成13年4月1日に消費者契約法が施行されたからには、有益費償還請求権を予め放棄する旨の特約が無効か否かは、消費者契約法第10条の問題となり、上記最高裁判決を理由として有効であるとの解釈は到底容認されません。 確かに、貴社が懸念されているとおり、この条項を削除した場合、賃借人が賃貸人に無断で増改築・改造を行い、それに数百万円の費用がかかり、その後すく退去した場合には、賃貸人が理不尽を被る可能性は否定できません。貴社の回答に「但し、甲(貸主)の責めに帰すべき事由もしくは都合により、乙(借主)が退去することになった場合は除く」との文言を加筆改定する予定とあるものの、これでは、賃貸人の了承を得て有益費を支出し、本件貸室の退去当時において賃貸物件の価値が客観的に増加していることが認められる場合であっても、有益費償還請求権を行使できない条項になってしまいます。 賃貸人の同意を得た場合であっても有益費償還請求権を行使できなくなるのは酷であります。再考の上、改定いただきたく改めて申入れを致します。 |
<2024(令和6)年6月19日付> 貴機構よりの【申入れの趣旨】に「賃貸人の了承を得て有益費を支出し、本件貸室の退去当時において、賃貸物件の価値が客観的に増加していることが認められる場合であっても、有益費償還請求権を行使できなくなってしまいます。」との記載がございますが、誤解が生じているようですので以下のとおり再度ご説明申し上げます。 弊社は「居住用建物賃貸借契約書」第9条3項で「本物件の増改築、改造もしくは模様替え又は、本物件の敷地内における工作物の設置及び鍵の追加設置と交換」を「禁止事項」として定めており、実務上この禁止規定事項である行為が行われたことはほとんどありません。また、賃借人(入居者)の退去毎に居室の用に足る改装を行っております。 貴機構が申し入れている「第15条3項」は第9条の禁止事項に違反して増改築、改造もしくは模様替えといった行為を排除するとともに、万が一そのような違反行為が行われた場合に対応処理することを主旨とした条項です。 これは2024年3月29日付の「居住用建物賃貸借契約書及び重要事項説明書に係る申入れ(3回目)」に対する回答書」の【申入れ4】で説明しました消費者庁の回答である「約款に違反する行為をした賃借人の有益費償還請求権は、消費者契約法も含め保護するに値しない」のとおりです。 貴機構が主張する「賃貸人の了承を得て有益費を支出」という概念は、弊社契約書において入る余地がございません。 尚、本条項の「禁止事項」及び「排除」という組み合わせの構成は、公益社団法人全日本不動産協会の「居住用建物賃貸借契約書」においても使用されているものです。 よって、これまでの3回に及ぶ「回答書」にて申し上げましたとおり、弊社は第15条3項に「但し、甲の責めに帰すべき事由もしくは都合により、乙が退去することになった場合は除く」との文言を加筆改訂する予定です。 |
| 問合せ事項①(5回目) | <2024(令和6)年10月28日付> 【お問合せ内容】 回答書(本年6月19日付)に対する当機構の見解は次に記載のとおりです。それに対する貴社の御回答をお願いします。 【当機構の見解】
上記3において述べたとおり、第9条(禁止行為)3項という規定があるから有益費償還請求権の問題は生じないとは言えません。 以下のとおり、約款15条(明渡し)3項は消費者契約法10条に抵触し無効と言える余地があります。
|
<2024(令和6)年11月29日付> 貴機構の見解である、1①の「有益費償還請求権を議論する余地はないとの見解」、②の「有益費償還請求権の問題は解消できません」及び2の「約款第15条(明渡し)3項と同第9条(禁止行為)3項との規定の整合性について」並びに3の「有益費償還請求権を予め放棄する特約は消費者契約法第10条に反し無効であることついて」に関しまして、以下のとおり回答いたします。 アーバネスト株式会社(以下「弊社」という)としまして、本件に関わることで可能な限り「判例、第三者の各弁護士の見解、実例等」を調査の上、項目別に検証します。
|
| 改定前 <新 設> 【約款15条(明渡し)3項】 乙は本件貸室の明渡しに際し、甲に対し移転料、立退き料等、その他名目の如何に拘わらず一切の金員を請求しない。 |
改定後 賃借人の有益費償還請求権及び造作買取請求権の放棄については居住用賃貸借契約書の特約事項に明記する。 【居住用賃貸借契約書(特約事項)】 乙は、本物件に投じた有益費、必要費及びその他の費用があっても、これを甲に請求しないものとする。 【約款15条(明渡し)3項】 乙は本件貸室の明渡しに際し、甲に対し移転料、立退き料等、その他名目の如何に拘わらず一切の金員を請求しない。 但し、甲の責めに帰すべき事由もしくは都合により、乙が退去することになった場合は除く。 |
3.当機構の見解、協議終了及び公表について
| 消費者機構日本の見解 | アーバネスト社の見解 |
|---|---|
| <2025(令和7)年3月13日付> 唯一見解の相違したままの約款第15条(明渡し)3項ですが、貴社の回答(令和6年11月29日付)は、但し書きを設け、「甲(賃貸人)の責めに帰すべき事由もしくは都合により、乙(賃借人)が退去することになった場合は除く」とした上で、「乙(賃借人)は、本物件に改造工事等を行う場合の費用は自己負担とし、有益償還請求権及び造作買取請求権を予め放棄する」を賃貸借契約に追記するものでした。 今回の回答書においても、貴社の見解が変わらず、当機構の見解と異なっているの は大変残念といわざるを得ません。この条項につきましては、見解の相違を残したまま申入れを終了することとし、当機構の反論を併せて記載いたします。
|
<2025(令和7)年4月30日付> 「当機構の反論を併せて記載」に対しまして、以下のとおり「貴機構の主張が失当であることの説明」及び「再反論」いたします。 2024(令和6)年11月29日付で弊社が主張した中の、〔3〕の(2)に記載のとおり、平成13年4月1日に「消費者契約法」施行後の平成18年9月6日及び平成28年9月29日の東京地方裁判所の判決で「有益費償還請求権を予め放棄する条項も有効と解すべきである」・「その余の争点を検討するまでもなく、原告の有益費償還請求は、理由がない」と明言されています。 貴機構が反論する「考え方には変化が見られます」及び「事前放棄条項が「無効」とされる可能性が高くなっています」との議論の入る余地はなく、それに沿った判例は存在しません。 貴機構の反論①及び②において、「無効とされる可能性が高い」・「無効とされる余地がある」・「無効とされる可能性が十分」など、5回も主張されています。 しかしながら、平成13年4月1日に「消費者契約法」施行後、「24年を経過した現在」に至っても、「有益費償還請求権の事前放棄」が同法に抵触して無効とされた判例はありません。 「消費者契約法」の重要性は弊社も理解し、尊重した上で業務を行っております。しかしながら、貴機構が提示された①の「製品の欠陥事案」・②の「(過度に)高額な違約金」などは、本件に類似する引用例としては、明らかに不適切です。 「消費者契約法」に基づき消費者保護を重視の観点については理解しております。しかしながら、前述しましたように、「消費者契約法」施行後、裁判所において「有益費償還請求権の事前放棄が有効」とされたことはありますが、「消費者契約法に基づき無効」との判断はなされておりません。「消費者契約法に基づき無効とされる可能性が高い」等の貴機構の主張は失当であります。 |
4.「有益費償還請求権の事前放棄が有効」とされた判例の出典について
| 消費者機構日本の問合せと見解 | アーバネスト社の回答と見解 |
|---|---|
| <2025(令和7)年6月13日付> 貴社の回答書(2025年4月30日付)において「当機構の見解、協議終了及び公表に ついて(説明・反論)」の4ページの下からの4行目以降に下記のとおりご回答がありました。 しかしながら、前述しましたように「消費者契約法」施行後、裁判所において「有益費償還請求権の事前放棄が有効」とされたことがありますが、「消費者契約法に基づき無効」との判断がなされておりません。 平成13年(2001年)4月1日の消費者契約法施行後、「有益費償還請求権の事前放棄が有効」とされたことがあるとのご回答をいただきましたが、有効と判断されたことについて判例の出典の記載がございませんでした。 判例の出典につきまして、貴社の文書によるご回答を2025年6月27日(金)までにお願いします。 |
<2025(令和7)年6月27日付> 貴機構よりの「有益費償還請求権の事前放棄が有効」とされた判例の出典について(2025年(令和7)年6月13日付)にて問い合わせがありました「判例の出典」を添付いたします。 なお、これらの出典については「当機構の見解、協議終了及び公表について」に対し、弊社より回答した書面(2025年4月30日弊社より発送、2025年5月1日に機構着)の1ページ目に「平成18年9月6日及び平成28年9月29日の東京地方裁判所の判決」と赤字で記載しております。 貴機構の「『最高裁判所で有効と認められている有益費償還請求権の事前放棄』はその後に成立された消費者契約法第10条に基づき無効とされる可能性が高い」という主張に関しましては以下の点から失当であることは明らかです。
|
| <2025(令和7)年8月29日付> 貴社の「有益費償還請求権の事前放棄が有効とされた判例の出典について」に対する回答書(2025年6月27日付)において「判例の出典」を添付いただき確認させていただきました。 対個人との賃貸借契約において「有益費償還請求権の事前放棄が有効とされた判例」は無いものと考えていますが、貴社からご指摘いただいたとおり消費者契約法によって有益費償還請求権の事前放棄が明確に否定された判例は、現時点においてございません。 一方、貴社に提供いただいた判例は、平成18年9月6日(保証金返還等請求事件)及び平成28年9月29日(造作物買取等請求事件)のいずれも事業者との契約になります。これにより事前放棄は認めていると主張されていますが、これらは個人との契約ではないため消費者契約法が適用されません。 貴社の居住用賃貸借契約は対個人との契約であり、今後、消費者契約法の問題になった場合、消費者契約法の条文を解釈すると問題があり、判例がでてくると考えられます。 |
