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申入れ・要請等

株式会社アイダ設計(建築請負事業者)の工事請負契約約款が、協議を経て、改善されました。

 消費者機構日本は消費者からの情報提供を受け、株式会社アイダ設計(埼玉県上尾市)に対して、当該事業者が使用する工事請負契約約款(以下本件約款という)について、「要請・問合せ」を行いました。

当該事業者から、8月2日付で回答を受領しました。

当該事業者から、11月15日付で回答を受領しました。

 当該事業者からは、当機構の要請及び問合せの内容を受け入れて、工事請負契約約款を改定するとの回答書を受領したことから、本協議を終了しました。
 当該事業者は、改定後の工事請負契約約款を2025年7月1日から使用を開始しています。

 当機構が要請及び問合せをした内容と当該事業者の回答及び改定後の工事請負契約約款新旧対照表は下記のとおりです。

消費者機構日本の申入れ等の内容 アイダ設計社の回答
要請事項① 【第4条(工事の変更、工期の変更)第4項】
 請負人は、工事の内容の追加又は変更、地盤改良工事、不可抗力、その他正当な理由があるときは、注文者に対して工期の延長期間を提示して、注文者はこれを承諾するものと定められております。
 上記条項の適用に関し、請負人の責めに帰すべき事由による工事内容の追加又は変更の場合は適用を除外する旨規定することを要請いたします。
 当社の責めに帰すべき事由による工事内容の追加又は変更の場合には、お客様に工期の延長を承諾する(すなわち、延長後の期日まで当社が履行遅滞による責任を負わないことを承諾する)義務はないものと認識しており、ご指摘に異存ございません。
 つきましては、「ただし、工事内容の追加又は変更が乙の責に帰すべきものである場合にはこの限りではない。」とのただし書きを追記します。
要請事項② 【第10条(損害の防止、第三者損害)第3項】
 施工について請負人が善良な管理者としての注意義務を果たしても回避できない事由により第三者に損害を及ぼしたときは、注文者がその損害を賠償することが定められています。
 しかし、民法第716条(注文者の責任)では、注文者は、注文又は指図についてその注文者に過失があった場合でない限り、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わないことが定められておりますので、上記条項は、民法の規定の適用による場合に比して消費者の義務を加重するものとなります。
 したがって、削除することを要請いたします。
 工事によって第三者に対する不法行為に該当するほどの騒音、振動、地盤沈下、地下水の途絶等が生じた場合、一般論としては、当社に善管注意義務違反が認められる場合がほとんどであると考えられますので、殊更、お客様の責任を加重する趣旨の規定ではありません。
 もっとも、上記を換言すれば、当社として必須の規定ではないともいえますので、貴法人の要請を受諾し、同項は削除します。
問合せ事項①(1回目) 【第2条(着工の準備)第8号】
 注文者は、請負人指定の地盤調査会社に地盤の調査を依頼することとし、その結果、地盤補強工事等が必要と判定された場合、注文者は、その判定に従った工事を行うとともに、この工事に要する費用を負担することが定められております。
  1. ①地盤調査を行わずに建設工事請負契約の内容を決めているのでしょうか。
  2. ②仮に建設工事請負契約締結時に地盤調査を行わない場合、注文者に対し、地盤補強工事等の費用負担につき、いつ、どのような説明をしているのでしょうか。
 基本的に請負契約締結前に地盤調査は行っていません。
 理由としましては、建て替えの場合、既存建物解体後でなければ地盤調査はできないためです。また、新たに土地を購入される場合には、土地の決済後(所有権移転後)でなければ地盤調査を実施できないためです。
 仮にお客様が更地を所有している場合には、理論上は請負契約締結前に地盤調査を行うことも可能ですが、建物の間取りや配置が確定した上で地盤調査を行うのが合理的といえます。
 なお、請負契約締結に先立って、お客様と資金計画を作成しており、その際に地盤改良工事が必要な場合の見込額をお伝えし、資金計画に組み入れています。
問合せ事項①(2回目)  「請負契約締結に先立って、お客様と資金計画を作成しており、その際に地盤改良工事が必要な場合の見込額をお伝えし、資金計画に組み入れています。」と記載されていますが、具体的にどのようにお伝えしているのでしょうか。例えば、資金計画書などが作成され、そこに地盤改良工事が必要な場合の見込額が記載されているということでしょうか。  ご指摘のとおり、請負契約締結に先立って、地盤改良工事が必要な場合、見込額をお客様にお伝えして資金計画書等に記載しております。
問合せ事項② 【第4条(工事の変更、工期の変更)第3項】
 工事内容の追加又は変更により請負人に損害を及ぼしたときは、請負人は注文者に対してその損害の補償を求めることができると定められていますが、注文者に損害を及ぼしたときについては定めがありません。注文者に損害を及ぼしたときは、どのような規定に基づいて何を請求できるのでしょうか。
 約款第4条自体が、お客様の都合で工事内容を追加又は変更する場合を念頭に置いています。したがって、お客様の都合で工事内容を追加変更した場合に、お客様に損害が生じることは想定できないため、注文者に損害が及んだときについては規定しておりません。
 仮に、当社の責に基づく事由による工事内容の追加変更があった場合、これによって引渡しが遅延した場合には履行遅滞に基づく損害賠償請求(約款第16条第1項)、お客様の了解なく工事内容を変更した結果、契約不適合に該当する場合には契約不適合責任(約款第17条)を負うものと認識しています。
 なお、内容によっては、不完全履行による損害賠償責任や不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性を排除するものではありません。
問合せ事項③ 【第5条(請負代金の変更)第2号及び第3号】
 不可抗力により工期が著しく遅延し、請負代金が明らかに適当でないと認められるとき(第2号)及び請負人の責めに帰することのできない事由による工期の変更により、請負代金が明らかに適当でないと認められるとき(第3号)は、それぞれ請負代金を変更するものと定められております。
 上記内容について、それぞれ具体的にどのようなケースを想定されているのかお知らせください。
 第2号につきましては、例えば、直近では能登半島地震のような大規模災害によって工期が著しく遅延し、その間に資材の価格や大工の人件費が高騰し、契約当時の請負代金では明らかに適当でないと認められるような場合を想定しています。
 第3号につきましては。お客様の事情(例えば、資金繰りや各種助成金の都合など)によって工期を変更したり、第三者が建設予定地を占有し、又は第三者との間で土地所有権を巡る紛争が生じたことによって工期を変更し、その間に資材の価格や大工の人件費が高騰し、契約当時の請負代金では明らかに適当ではないと認められるような場合を想定しています。
 もっとも、第2号は工期が「著しく」遅延した場合、第2号。第3号とも請負代金が「明らかに」適当でないと認められる場合としていますので、当社が請負代金の変更を求めるのは極めて限定的な場合です。
問合せ事項④ 【第11条(不可抗力による損害)及び本件約款第21条(請負人の中止権、解除権)第6項】
 不可抗力によって契約の目的物、工事材料等、支給材料等について損害が生じ、請負人が善良な管理者としての注意をしたと認められるときは、注文者がこれを負担することが定められております。
 一方、本件約款第21条第6項では、不可抗力などにより請負人が施工できないとき、請負人は、注文者に損害の賠償を請求することができると定められております。
 このように、不可抗力によって生じた損害の賠償(負担)について、それぞれ内容が異なっております。どのようにして上記条文の適用を分けるのか教えてください。
 第11条は不可抗力によって物的損害が生じた場合、第21条第6項はお客様の責に帰すべき事由によって契約を解除した場合を想定しています。
 もっとも、ご指摘を受けて確認したところ、第21条第1項第3号に「不可抗力などにより施工できないとき」が紛れ込んでおり、この場合にお客様が損害賠償責任を負うことは不適切と判断しました。
 そこで、第21条は以下のとおり変更します(変更がない箇所は「略」とします。)。
第21条(請負人の中止権、解除権)
  1. (1) (略)
    一(略)
    二(略)
    三 前各号のほか、甲の責に帰すべき事由により工事が著しく遅延したとき。
  2. (2) 乙の責によらない事由又は不可抗力により施工ができない場合、乙は、工事を中止することができる。
  3. (3) 前2項の事由が解消したときは、乙は、工事を再開するものとし、甲に対し、必要に応じ工期の延長を提示し、甲はこれを承諾するものとする。
  4. (4) (略)
    一 第1項又は第2項による工事の中止期間が2か月以上となったとき。
    二(略)
    三 前各号のほか、甲の責に帰すべき事由により工事が著しく遅延したとき。
  5. (5) 甲が支払を停止する…(略)…本契約を解除することができる。乙が工事を中止した場合において、本件事由が解消したときは、第3項を準用する。
  6. (6) 乙は、第4項(ただし、第一号において、工事の中止が第2項によるものであるときを除く。)又は第5項によって本契約を解除した場合、甲に対し、損害の賠償を請求することができる。
問合せ事項⑤(1回目) 【第12条(完成・施主立会い)第4項】
 工事完成後、施主の立会いを行うまでの期間及び施主検査で指摘された箇所の補修に要する期間は、いずれも工期に含まれないものとすると定められております。
  1. ①上記「工期」とは、請負契約上の何を指すのでしょうか。その定義を教えてください。
  2. ②施主の立会いを行うまでの期間及び施主検査で指摘された箇所の補修に要する期間が、いずれも工期に含まれない場合でも(「工期」には遅れがないと判断される場合でも)、施主検査で指摘された箇所の補修に遅れが生じるなど、請負人の責めに帰すべき事由により、引渡期日までに本契約の目的物を引き渡すことができないときは、本件約款第16条第1項により、請負人は履行遅滞責任を負うことになりますでしょうか。
  1. ①工期とは、着工から引渡予定日までの期間を指しています。
  2. ②完成後、立会いまでの期間を工期に含まないとしている趣旨は、お客様の都合で立会いが先延ばしになった場合に、当該期間については当社の履行遅滞にならないことを明確にするためです。
     また、軽微な補修に要する期間を工期に含まないとしている趣旨は。居住する上で支障にならない軽微な不具合を理由としてお客様が決済・引渡しを拒絶し、かつ。当社の履行遅滞であるとのご主張をされることを回避するためです。
     なお、第12条第4項は「前項の補修」、すなわち建物引渡後の軽微な補修を行う場合について定めたものですので、引渡しができない程度の不具合(居住する上で支障となるような不具合や居住後では補修できない不具合)の場合には適用されません。
     引渡しができない程度の不具合がある場合は、そもそも完成に至っていないと考えられますので、補修の結果、引渡予定日を徒過した場合には、当社は第16条第1項により履行遅滞責任を負うことになります。
問合せ事項⑤(2回目) 「軽微な補修に要する期間を工期に含まないとしている趣旨は、居住する上で支障にならない軽微な不具合を理由としてお客様が決済・引渡しを拒絶し、かつ、当社の履行遅滞であるとのご主張をされることを回避するためです。」と記載されており、ご趣旨は理解いたしました。しかし、条項上は補修すべき部分が「軽微」としか記載されておらず、ご趣旨を読み取ることが困難です。条項に説明を書き加えるなどして、より分かりやすい記載にしていただけますでしょうか。  第12条第3項ただし書き及び第4項を以下のとおり変更します。
  1. (3) 立会の結果、工事に補修すべき部分があったときは、乙は速やかに補修し、補修箇所につき甲の確認を受けるものとする。
     ただし、補修すべき部分が、居住する上で支障とならないものであり、かつ、居住後に補修することが可能であるときは、乙は引渡し後に補修することができる。
  2. (4) 工事完成後、第2項の立会いを行うまでの期間及び前項ただし書の補修に要する期間は、工期に含まれないものとする。
問合せ事項⑥ 【第21条(請負人の中止権、解除権)第1項第3号】
 不可抗力などにより請負人が施工できないとき、請負人が注文者に対し、書面をもって相当の期間を定めて催告してもなお解消されないときは、工事を中止することができると定められております。
 しかし、不可抗力とは、注文者と請負人のいずれにもその責めに帰することができない事由(本件約款第11条参照)となります。このように注文者の責めに帰することができない事由によって施工ができない場合であるにもかかわらず、請負人が注文者に対し、何故催告をするのか、その催告によって何故中止、解除(第3項)及び損害賠償請求(第6項)ができるのか、教えてください。
 ご指摘のとおり、お客様に対し、不可抗力を解消するよう催告するというのは不適切ですので、上記4(問合せ事項④に対する回答)のとおり、現状の第3号を削除します。