申入れ・要請等
「保険金を使って、住宅修理をしませんか」と勧誘し建物の補修等の工事を行っている一般社団法人日本住宅環境向上機構に対し、当該法人が使用している「保険申請支援及び補修工事完全合意条項」の内容について申入れをしていましたが、回答がありませんでした。この条項は問題がありますので、ご注意ください。
消費者機構日本は消費者からの情報提供を受け、一般社団法人日本住宅環境向上機構(神奈川県川崎市)に対して、当該法人が使用する「保険申請支援及び補修工事完全合意事項」について、申入れを行いました。
当該法人は、当機構からの申入れに対して回答すると言いながらも、回答書が提出されることは、ありませんでした。そこで当機構は、独立行政法人国民生活センターによる「和解の仲介申請」を行い、当該事業者と協議を行なおうとしましたが、この協議にも応じることがなく、「和解仲介手続」も不調となりました。
当機構としては、当該法人の使用している「保険申請支援及び補修工事完全合意条項」には、不当条項が含まれていると考えており、本ホームページにて内容を公表し、注意喚起を行います。
当機構が問題とした条項
第3条 合意の解消
1.合意解消
甲は、下記の理由により合意を解消する場合は、手数料を支払うことにより解消することができる。保険会社への申請後は、甲は乙へ受取保険金額の40%を支払う。
※但し、合意を解消する場合は、甲の不慮の事故や長期入院、災害による建物崩壊等のやむをえない場合に限ります。また乙が特別な事情で工事ができないと判断した場合も合意を解消をすることができる。また申請後、甲によって保険申請をキャンセルした場合は、見積もり金額の40%を乙に対して1カ月以内に支払う。
不当と考える点(詳しくは、【2018年11月16日付 申入書】をご覧ください)
①上記枠内一重下線部分
受取保険金額や見積金額は、補修工事費用に相当する金額であると考えられるが、補修工事着手前の契約解除の場合でも、その費用の40%もの額を違約金として徴収するのは、当該法人に生じる平均的な損害を超える部分を含んでいると考えられる。したがって、消費者契約法第9条第1号に該当する不当条項である。
なお訪問し営業して契約した場合は、特定商取引法の対象となる訪問販売にあたるが、その場合、契約の解除に伴う損害賠償等の額には制限が設けられているが、それを超える違約金を定めている。
②上記枠内二重下線部分
本件契約は、保険申請業務及び補修工事をその内容としている。保険申請業務(委任契約)は解約の自由が原則であり(民法651条)、補修工事(請負契約)は、請負人が仕事の完成をしない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約の解除ができる(民法641条)。にもかかわらず、解約を「不慮の事故や長期入院、災害による建物崩壊等のやむを得ない場合に限ると」した本規定は、消費者契約法10条により無効と考える。