申入れ・要請等
ペッツファースト(株)(犬・猫の販売事業者)
犬・猫の「販売契約書」の是正協議を終了しました。
~「販売契約書」に「消費者(購入者)の法律上の権利行使を妨げるものではない」旨の条項が新設されました~
是正ポイント
犬・猫の「販売契約書」から下記の条項が削除されました。
- 「どんな理由があっても、犬・猫の購入代金は返金しない」とする条項
- 「販売した犬・猫を原因とする事故・伝染病・所有物の汚染等に関しては、一切の責任を負わない」とする条項
- 「どんな理由があっても、一度締結した犬・猫の購入代金のクレジット会社等への返済は拒否できない」とする条項
犬・猫の「販売契約書」に下記の条項が新設されました。
- 「販売契約書の記載事項は、消費者(購入者)の法律上の権利(※1)の行使を妨げるものではない」とした条項(第七条1項)
- 前条の効果を実質化するために、消費者(購入者)の法律上の権利行使に関して相談を受け付ける窓口(連絡先と受付時間)を記載した条項(第七条1項)
- 「販売契約書に記載されていない問題が発生した場合には、消費者(購入者)と誠実に協議することとする」とした条項(第八条1項)
- ※1 瑕疵担保責任(※2)や債務不履行責任(※3)に基づく請求などのこと。
- ※2 瑕疵担保責任(民法第570条、566条)
売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合、買主が隠れた瑕疵があることを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、隠れた瑕疵を知ってから1年間は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。 - ※3 債務不履行責任 (民法第415条)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
経過
消費者機構日本は、2010年5月、ペッツファースト(株)(※4)に対して、当該事業者が使用する犬・猫の「販売契約書」の販売後の治療保障制度や先天性疾患発症時の保障制度等が消費者契約法等に反するとして是正を求めました。
- ※4 本社は東京都大田区。犬と猫を専門に販売するペットショップで、全国に81店舗(2012年2月現在)を展開している。
当機構は当該事業者に是正の申入れ等を行って以降、書面及び面談にて協議を行ったところ、法令に反すると考えられる契約条項の削除は受け入れられました。購入後の保障内容の充実についても具体的に要請しましたが、当該事業者が当機構に提示した回答内容を撤回・変更する経過を経て、保障内容は改定前の内容より後退してしまいました。(下表①部分)
そのような経緯から申入れ等を行ってから2年弱が経過しましたが、この度、犬・猫の「販売契約書」に「消費者(購入者)の法律上の権利行使を妨げるものではない」とする条項が新設されたこと、さらに、本年9月を目処に行う犬・猫の販売契約書の改定時には表記を改善することが約束されたことをふまえ、協議終了に至りました。
なお、協議終了に際しては、合意書を締結しました。
当機構が是正を求めた事項と当該事業者の回答要旨は下記「<是正を求めた事項と回答>【表】」のとおりです。当該事業者は回答趣旨を反映した犬・猫の「販売契約書」(以下「新販売契約書」)を2012年4月上旬から各店舗で運用を開始しています。
「新販売契約書」に「消費者(購入者)の法律上の権利行使を妨げるものではない」との条項が新設された意義
当該事業者は、「新販売契約書」に「販売した犬・猫の感染症等の治療費の負担期間は7日間とし、1日の治療費の上限負担金額は2000円とする。」(第一条1項)、「販売した犬・猫の先天性疾患発症時の治療保障制度は、販売後90日以内でかつ提携動物病院の診断がある場合に代替の犬・猫にて補償を行う」(第三条1項)と保障内容を明記しています。一方で、「消費者(購入者)の法律上の権利行使を妨げるものではない」(第七条1項)という条項を新設しました。
「消費者(購入者)の法律上の権利の行使を妨げるものではない」という条項は、購入した犬・猫の疾患がこの業者が定めた「新販売契約書」の保障内容の対象にならない場合でも、購入時にすでに病気に罹っていたり、また、先天的な疾患や障害(法律では「隠れた瑕疵」といいます。)をもっていた場合に、消費者(購入者)は、この犬・猫の販売事業者に対して民法上、瑕疵担保責任(※2)や債務不履行責任(※3)を問えることを契約上でも明確にしたものです。
したがって、購入した犬・猫に瑕疵があること等が明らかになった場合は、治療費の負担期間や負担金額等についての業者の保障内容の上限にかかわらず、消費者(購入者)は、被害に応じた損害賠償を請求できることになります。
また、この「消費者(購入者)の法律上の権利の行使を妨げるものではない」条項の新設に伴い、この事業者は、自社の相談窓口において、「消費者(購入者)の法律上の権利の行使についての相談にも応じる」ということを明らかにしています。
当機構が是正を求めた事項 | 当該事業者の回答要旨 | |
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① | 「販売した犬・猫が病気に罹った場合に、販売後15日間までの治療費は負担するが16日以降の治療費は負担しない」条項は、消費者契約法第10条に反するので適正な内容に是正すること。 | 「販売後7日間に感染症等が発症した場合の治療費は、提携動物病院で治療する場合に限り、1日につき最大2,000円を負担する」との条項に変更する。 (「新販売契約書」第一条1項部分)
|
② | ①の場合に治療費を負担する動物病院の適用範囲を、提携動物病院以外にも広げること。 | 提携動物病院以外の治療費負担はしない。 (「新販売契約書」第一条1項部分) |
③ | 「販売した犬・猫が、販売後90日以内に通常の生活に支障をきたす生命にかかわる(※)重大な先天性疾患と提携病院により診断されたときは、代替の犬・猫を提供する」条項は、消費者契約法第10条に反するので適正な内容に是正すること。
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「販売後90日以内に通常の生活に支障をきたし、且つ生命に係わる重大な先天性疾患が提携動物病院にて診断された場合は、代替の犬・猫を提供する」との条項に変更する。
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④ | 「どんな理由があっても、犬・猫の購入代金は返金しない」条項は、消費者契約法第10条に反するので削除すること。 | 左記条項は削除した。 |
⑤ | 「販売した犬・猫を原因とする事故・伝染病・所有物の汚染等に関しては、一切の責任を負わない」条項は、消費者契約法第8条1号、3号に反するので改定すること。 | 左記条項は削除した。 |
⑥ | 「どんな理由があっても、一度締結した犬・猫の購入代金のクレジット会社等への返済は拒否できない」条項は、割賦販売法に反するので削除すること。 | 左記条項は削除した。 |
さらに、本年9月以降は、新販売契約書の第一条〔付記事項〕と第七条1項は、次のような条項に改められます。
新販売契約書(本年4月初旬から運用開始) | 2012年9月以降の契約条項 |
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第一条〔付記事項〕 7日目までの疾患であっても、8日目以降の治療費は全額、お客様のご負担となります。 |
第一条〔付記事項〕 7日目までの疾患であっても、8日目以降の治療費については、この治療保障制度の保障対象とはなりません。 |
第七条1項 本契約条項により、お客様の法律上の権利行使を妨げるものではありません。 |
第七条1項 本契約条項により、お客様の法律上の権利(瑕疵担保責任や債務不履行に基づく請求など)の行使を妨げるものではありません。 |
- ※当該事業者から提供を受けた本年9月改定版の販売契約書【9月改定販売契約書】を確認したところ、第一条〔付記事項〕と第七条1項は上記内容に改められていました。