消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

意見・提言

【2019年9月10日:掲載】

株式会社かんぽ生命保険による不適切な保険販売に対する抗議と意見表明

 当機構は、本年6月24日の報道を契機に、(株)かんぽ生命保険(以下、「かんぽ生命」)の保険商品の不適切な販売が行われていたことが判明したことをうけ、日本郵政(株)、日本郵便(株)、(株)かんぽ生命保険に対して、抗議と意見表明を行いました。

2019年9月4日

日本郵政株式会社
 取締役兼代表執行役社長 長門 正貢 様
日本郵便株式会社
 代表取締役社長兼執行役員社長 横山 邦男 様
株式会社かんぽ生命保険
 取締役兼代表執行役社長 植平 光彦 様

特定非営利活動法人 消費者機構日本
代表理事 副理事長 佐々木 幸孝

株式会社かんぽ生命保険による不適切な保険販売に対する抗議と意見表明

 本年6月24日の報道を契機に、(株)かんぽ生命保険(以下、「かんぽ生命」)の保険商品の不適切な販売が行われていたことが明らかになりました。郵便局が代理店として営業する中で、顧客のニーズよりも、自己の営業成績を優先させたため、不利な保険契約に乗り換えさせられ、無保険状態にさせられ、あるいは、保険料の二重払いを強いられるといった事態が横行していました。

 これら一連の問題は、消費者無視も甚だしく、当事者は大きな不利益を強いられており、このような不適切な保険販売が行われていたことに対し、当機構は消費者団体として強く抗議するものです。

 一方で、不適切な保険販売に関する報道がなされる中で、遅ればせながら、すべての契約調査を行い顧客の疑問に答えていくこと、そして不利益が発生したことが特定可能な類型の事案については別途調査を行い、その結果をふまえ顧客の意向を確認の上、契約復元等の手続をすすめることが表明されています。

 これらの調査と対応について、顧客本位の姿勢で確実に実施されなければなりません。特に、顧客が容易に選択できる対応策が提示される必要があると考え、以下のとおり意見を表明します。

第1 意見の内容

 消費者に対し、特定事案をはじめ一般的に見て消費者に不利益を及ぼす結果となる契約の締結について勧誘をしていた場合において、消費者が乗換前の利益情況を確保したいと希望するときは、原則として、乗換前の保険契約の復元その他の消費者の不利益を解消するための措置を採るべきです。

 また、乗換前の保険契約を復元する場合には、受領済の解約返戻金及び未払保険料について柔軟な取り扱いをし、契約の復元が容易になるような措置を講ずるべきです。

第2 意見の理由

 かんぽ生命は、消費者に不利益が発生した可能性がある契約類型(特定事案)を抽出し、優先的に調査を進める旨の対応を行っております(2019年7月31日付「日本郵政グループにおけるご契約調査及び改善に向けた取り組みについて」 別紙(添付資料)の2頁)。この特定事案のうち、契約類型A及びC等では、消費者がかんぽ生命に対し、受領済みの解約返戻金や乗換前の契約の解約時から復元時点までの保険料等の支払いを行うことで、乗換前の契約が復元されるとしています。

 しかし、一般的に生命保険の解約返戻金は高額である上、復元の結果未払いとなっている上記保険料も高額になっている可能性があります。そのため、消費者がこれらの支払いを行うことができず、乗換前の契約の復元を躊躇し、結果として消費者の被害回復が実現できないおそれがあります。

 そこで、従前の保険契約を復活させるという方法を取らず、従前の保険と同一内容の保険に新たに加入することができるようにすることや、予定利率の変更により損失が生じるであろう額を保険金支払い時に上乗せして支給することとするなど、従前の保険を復活させずに消費者の不利益を解消するための措置をとることも検討すべきです。

 また、乗換前の契約を復元する場合には、たとえば、解約返戻金の返戻をせずに乗換前の契約を復元し、将来の保険金や解約金を支払う際に支払済みの額を控除することや、未払い保険料の分割払いを認めることなどといった、消費者にとって簡易に乗換前の契約を復元できるような対応が必要です

以上

添付資料

関連公表