消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

意見・提言

東京都消費生活対策審議会「中間報告」に関する意見を提出

 東京都の消費生活対策審議会施策連携部会では、中間報告「消費者の自立支援に向けた事業者団体・消費者団体等との連携による新たな消費者施策のあり方について」をとりまとめ、この間、意見・提案を募集していました。

 消費者機構日本では、この意見募集に呼応し、下記の意見書を提出しました。

2005年6月10日

東京都生活文化局消費生活部企画調整課 御中

特定非営利活動法人
消費者機構日本
理事長 品川 尚志

「消費者の自立支援に向けた事業者団体・消費者団体等との連携による新たな消費者施策のあり方について」への意見

 「21世紀型消費者政策」や「消費者基本方法」において示された消費者政策の流れの先頭にたって具体化をすすめるべく、東京都消費生活対策審議会において、「消費者の自立支援に向けた事業者団体・消費者団体等との連携による新たな消費者施策のあり方について」積極的に検討をすすめられていることに敬意を表します。そして、今回とりまとめられた「中間報告」について、基本的に賛意を表明するとともに、この方向での施策の具体化が早期にはかられることを期待するものです。

 私ども消費者機構日本は、消費者被害の拡大防止のため、消費者団体訴訟制度の実現と活用を目指して、(財)日本消費者協会、(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、日本生活協同組合連合会の3団体が、専門家・学識者・消費者団体の方々等に呼びかけて、2004年9月17日に発足しました。2005年1月には特定非営利活動法人として認証を受け、活動をすすめております。

 消費者機構日本としても、消費者団体訴訟制度の実現に尽力するとともに、同制度を活用できるだけのしっかりとした組織・財政基盤を形成し、消費者行政との連携をすすめていくことをあらためて表明いたします。

 その上で、さらに補強・具体化を要請する事項について意見を申し述べます。

1.団体訴権適格消費者団体等との連携による消費者被害の防止について

 「適格消費者団体に対して、事業者情報やメコニス情報も含め、消費生活総合センターの相談情報を積極的に提供していくことを検討する必要がある」との意見について賛同いたします。
 なお、現時点において、消費者機構日本では、以下のような相談情報の活用をイメージしています。このような相談情報の活用イメージも参考にしていただきながら、相談情報の提供のあり方について、今後検討をすすめられることを要請します。

(1)事案に対する対応検討の際の素材としての情報提供

 消費者機構日本は、会員団体が受け付けている消費者相談情報の中から、不当と考えられる約款・勧誘行為に関する情報について、提供を受ける予定です。また、臨時の電話相談(110番活動)を実施し、消費者被害の情報把握に努めてまいります。そのような活動を通じて把握した事案について、どのような対応を行なうか判断するためには、当該事業者による類似事案がどの程度の件数発生しているのかといった情報の把握が必要になります。そのために消費生活総合センターの所有する相談情報の提供は、大変有効であると考えます。

(2)申し入れ、提訴の段階での根拠資料としての情報提供

 問題のある約款・勧誘行為について、当該の事業者に是正の申し入れを実施する際、さらに申し入れが不調に終わり差止めを求めて提訴する段階において、被害を立証できる資料や証言が必要となります。消費者機構日本では、上記のような自らの取り組みの中で、消費者被害の原因となった約款を収集するとともに、勧誘行為についても被害者の証言等を集める努力を行ないます。さらに、消費生活総合センターに寄せられている広範な相談情報の中から、被害の要因となった約款や、勧誘行為の実状を証明するような情報の提供を受けることで、より説得力をもった申し入れ活動や訴訟活動が展開できるものと考えております。

2.消費者団体等との連携による不適正取引行為の調査・指導に関する情報収集の強化

 適格消費者団体が独自に消費者相談情報の収集をすすめるなかで発見した、消費生活条例や特定商取引法に違反するような不適正な取引行為について、東京都の消費生活総合センターを通じて、事業者調査・指導部署に積極的に提供し、指導を求めていきたいと思います。
 逆に、消費者契約法に反する約款や勧誘行為を是正するよう事業者調査・指導部署が、事業者に指導を行っても当該事業者が是正しないときは、適格消費者団体が代わって申し入れを実施するとともに、差止めの提訴を行なうといった役割分担も想定されます。
 両方の可能性を視野に入れつつ、情報交換の仕組みについて、適格消費者団体との協議も行ないながら、検討をすすめられるよう要請します。

3.消費者訴訟の援助制度の拡充について

 今回の報告書ではふれられていませんが、適格消費者団体が消費者団体訴訟制度を活用する際に、訴訟費用の貸付や必要な資料提供など、訴訟活動に必要な援助を受けられるよう、現行制度の拡充についての検討を要請します。
 消費者団体訴訟制度は、消費者被害の拡大防止・健全な市場の形成という公益的な目的を実現するための制度ですが、消費者団体にとっては訴訟費用や情報収集に必要な労力・費用等の負担が大きい制度です。このような公益的な活動を推進するために、援助制度の拡充が必要であると考えます。

4.事業者の消費者志向を高めるための取組み

 参考資料として添付されている「中小企業等におけるコンプライアンス経営に係る自主行動基準作成等の実態調査」では、消費者団体等に期待する事項として「企業倫理やコンプライアンス経営に関する消費者側の情報・意見の提供」「貴社や当業界に関する消費者側の情報・意見の提供」がそれぞれ、20%強の回答を得ています。
 このアンケート結果からも、事業者の自主行動基準等を評価するといった取組みを通じて、消費者志向経営を促進するという点も、消費者団体の役割として重要と考えます。今回の「中間報告」において、そのような消費者団体の役割を明示し、消費者団体が継続的に事業者の消費者志向経営を促進する取組みを展開できるよう、必要な支援を行政としても行なうことを検討されるよう要請します。

5.東京都消費生活条例の改正について

 今回の中間報告に記述された内容や、上述の要請事項について具体化をすすめるためには、例えば「消費者訴訟の援助制度の拡充」のように、消費生活条例の改正が必要な部分もあると考えられます。今回の審議会での答申を受け、早期に条例改正の検討をすすめられるよう要請いたします。

この件に関する連絡・問い合わせ先
消費者機構日本(担当 磯辺)
住所:東京都千代田区六番町15主婦会館プラザエフ6階
電話:03-5212-3066 FAX:03-5216-6077
電子メール:webmaster@coj.gr.jp