イベント等
第25回消費者志向経営セミナー
「消費者法制の基礎セミナー」の開催報告
当機構では、2017年8月2日(水)午後に「消費者法制の基礎セミナー」と題した第25回消費者志向経営セミナーを開催いたしました。
講師は、昨年10月の当セミナーに続いて、当機構の代表理事 副理事長で弁護士の佐々木 幸孝先生と同じく当機構の理事で消費生活相談員の大谷 聖子氏にお願いました。
佐々木 幸孝先生からは、消費者法制の歴史と概要、消費者契約法をはじめとした各法律の解説、消費者団体訴訟制度と事業者として注意すべき点の実例として、消費者団体による差止請求及び2016年10月に施行された消費者裁判特例法に基づく被害回復制度などについて講義を受けました。
また、大谷 聖子氏からは、地方消費者行政の現況、消費生活相談員の業務、2016年度の相談の傾向と特徴、事業者への要望等についてお話しいただきました。
- 1.テーマ
- 消費者法制の基礎を学ぶ
- 2.日時
- 2017年8月2日(水)
13時30分~17時00分 - 3.会場
- 主婦会館プラザエフ 5階 会議室
- 4.参加費
- お一人様 7,000円
- 5.対象者
- 企業・団体の法務部門、内部統制部門、コンプライアンス部門、顧客対応部門、消費者契約担当部門等の新任担当者、消費者法制の基礎を学習したい方
- 6.参加人数
- 22名
7.タイムスケジュールと内容
時 間 | 内 容 |
---|---|
13:00~13:30 | 受付 |
13:30~13:35 | 開会挨拶、資料確認 |
13:35~16:20 適宜、休憩 |
講義1 消費者法制の概要・消費者契約法の解説と差止請求事例 講師:弁護士 佐々木 幸孝 氏 (東京弁護士会 消費者問題特別委員会委員 専修大学法科大学院客員教授) 〇消費者法制の概要 消費者問題と消費者法の歴史 消費者法の種類 〇各法律の概要 消費者基本法、消費者安全法、消費者契約法、特定商取引法、 景品表示法、食品表示法 〇消費者団体訴訟制度と事業者として注意すべき点(実際の事例) (消費者団体による差止請求と被害回復) ○質疑応答 |
16:20~16:30 | 休憩 |
16:30~17:00 |
講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望 講師:消費生活相談員 大谷 聖子 氏 (日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 消費者相談室副室長) 〇消費生活相談の業務とは 〇2016年度の消費生活相談の傾向と特徴 〇事業者への要望 |
8.講義内容
(1) 講義1 消費者法制の概要・消費者契約法の解説と差止請求事例について
消費者法制の概要として、消費者問題と消費者法の歴史、各法律の成り立ちとその時代の背景や特色を3つに区分(①消費者保護基本法の成立まで ②消費者基本法ができるまで ③消費者基本法の成立以降)して説明されました。また、消費者法の種類として、「基本法」「行政規制(業法)」「民事ルール(民事実体法)」の3つについて説明がされました。
その後、「消費者基本法」「消費者安全法」「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」「食品表示法」の6つの法律について解説がされ、それぞれの法律の概要、位置づけ、立法目的、主な条文の解説と具体的な事例の紹介がありました。
特に「消費者契約法」は、2017年6月3日に施行された内容について、「特定商取引法」は、2017年12月3日までに施行される内容についてそれぞれ詳細に言及がされました。
また「特定商取引法」の説明資料では、取引の類型ごとに「書面交付義務」や「クーリングオフ」、「取消権」等の違いが一覧化され、理解しやすい内容となっていました。
最後に、消費者団体による「差止請求」と「被害回復」についての説明があり、「差止請求」については、図に基づいて差止請求の流れが解説され、事業者への影響や契約書面などの内容が適正か否か日常的に点検することの重要性に触れられるとともに、実際に当機構がこれまでに行った差止請求事例の内容の説明がされました。「被害回復」についても図に基づいて被害回復までの流れが解説されたあと、この制度の持つ意味や対象となる案件の条件、事業者として注意いただきたい点について説明がされ、対象となる消費者情報を積極的に提供することが消費者の信頼を取り戻すことにつながるといった点について言及がされました。
(2) 講義2 消費生活相談の業務と事業者への要望について
先ず、地方消費者行政の現況、消費生活相談業務は消費者基本法、消費者安全法に基づいて地方公共団体の責務として行われていること、全国の消費生活センターの設置数、PIO-NET端末の配備状況について説明がありました。続いて、2016年度の相談の傾向と特徴として、①通信サービスに関する相談件数が突出していること、②通信サービスに関する相談は幅広い年齢層で見受けられ、特に男性では60歳代、女性では40歳代が多いこと、③高齢者に関する相談件数は2013年をピークに減少傾向にあるが、依然として高水準であり、4件に1件は高齢者からの相談が占めていること、④販売購入形態別にみた場合、店舗購入の割合が減少する一方でインターネット通販の割合が拡大し、高齢者でもその割合が増えていること、といった点が挙げられるということでした。
さらに最近注目される消費者問題として、①SNSをきっかけとしたトラブル相談の増加、②「お試し」のつもりが定期購入となる通販相談が増加、③アダルト情報サイトに関する相談は若年層が減少し中高年が増加、④アダルト情報サイトに関する二次被害の相談が増加、⑤高齢者が巻き込まれる詐欺的な手口に関する相談は多く、引き続き注意が必要であること、といった5点の指摘がありました。
最後に、消費者基本法における事業者の責務と事業者への要望についてのお話があり、消費生活センターからの申し出や斡旋に対して真摯に協力していただきたい、などのお願いがありました。
今回のセミナー参加者からは、講義1、2共に「参考になった」との意見を多くいただき、具体的には、講義1に関しては「法改正があった部分の説明が丁寧で大変参考になった」「民法との比較の中で消費者保護法制の全体像が見渡せました」「事業者が注意すべき視点が具体的に示されており勉強になりました」「消費者・消費者団体とのコミュニケーションの大切さを改めて実感しました」等の意見があり、講義2に関しては「消費生活センターが事業者に求めていることが理解できました」「消費者トラブルの近年の状況について具体的に理解することができました」「相談件数が増えている一方で、相談していない方も多いということを事業者は理解し対応することの重要性を感じた」といった感想をいただきました。