イベント等
東京都と消費者機構日本の協働事業 事業者セミナー 開催報告
新しい消費者団体訴訟制度に事業者が備えるべきポイント
2016年10月1日に、集団的消費者被害回復訴訟制度が施行されることとなりました。
現在、適格消費者団体では、不当な契約条項、勧誘行為、広告・表示に対する差止請求(裁判外含む)を行っていますが、この制度の施行により適格消費者団体のうち、さらに認定を受けた団体(特定適格消費者団体)が差止請求に加えて被害回復請求も実施できるようになります。
これにより、消費者に代わり特定適格消費者団体が、事業者の違法な行為によって多数の消費者が被った金銭的被害を回復するための訴訟を提起することが想定されます。
このセミナーでは、差止請求訴訟制度と新しい被害回復訴訟制度の概要を中心に解説しました。
開催日:2015年12月2日(水)
時間 | セミナー内容 | 講師 |
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12:40~13:00 | 受付開始 | |
13:00~13:45 | セミナー① 〇消費者機構日本の活動紹介、消費者団体訴訟制度の解説 差止請求訴訟制度概要、適格消費者団体とは、これまでの差止訴訟事例・是正事例などの紹介。 (適用される法律-消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、食品表示法) |
消費者機構日本 常任理事 弁護士 中野和子 |
13:45~13:55 | 休憩 (質問用紙受付) | |
13:55~14:45 | セミナー② 〇集団的消費者被害回復訴訟制度の解説 被害回復訴訟制度の概要、特定適格消費者団体とは、訴訟制度で想定される事例などの紹介。 |
消費者庁 政策企画専門官 小田典靖 |
14:45~14:55 | 休憩 (質問用紙受付) | |
14:55~15:30 |
〇新制度に対して事業者が気を付けるべき点および準備する内容、休憩時間に集められた質問用紙の回答。 |
- 開催場所:
- 東京都消費生活総合センター 教室Ⅰ・Ⅱ セントラルプラザ17階
- 参加費:
- 無料
- 対象者:
- 事業者、事業者団体の方
- 参加者数:
- 61団体81名
セミナー概要
セミナー① 消費者機構日本の活動紹介、消費者団体訴訟制度の解説(常任理事 中野和子弁護士)
まず最初に、消費者機構日本の紹介がされ、適格消費者団体とは消費者契約法に規定された内閣総理大臣認定を受けた団体であること、消費者機構日本が担う消費者団体訴訟制度(差止請求)の概要が説明されました。また、消費者から適格消費者団体への情報提供に始まり、事案検討、差止請求の申入れから事業者交渉、是正までの流れが解説され、全国の各適格消費者団体の事例報告集(消費者庁の検討委員会資料)をもとに、裁判に至った事例や、裁判外の交渉で終了した事例の紹介などがありました。
セミナー② 集団的消費者被害回復訴訟制度の解説(消費者庁 小田典靖 政策企画専門官)
2016年10月から施行される集団的消費者被害回復訴訟制度(正式な法律名-消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律、略称:消費者裁判手続特例法)の概要を説明されました。訴訟の対象となる事例、対象とならない事例の具体例や、被害回復訴訟が2段階になること、安易な訴訟提起はされないこと、制度施行までに業務のどのような点を見直す必要があるのかをわかりやすく解説されました。
最後に、この制度の施行後に被害回復訴訟が起こされて、仮に事業者が一段階目の訴訟に負け、簡易確定手続開始決定がなされた後は、事業者自身もホームページや事業所に、訴訟の内容や対象となる債権、対象消費者の範囲などを公表する必要があることが説明されました。
シンポジウム 新制度に対して事業者が気を付けるべき点および準備する内容
- パネラー
- 消費者庁 小田典靖 政策企画専門官
消費者機構日本常任理事 中野和子弁護士 - 進行
- 消費者機構日本 専務理事 磯辺浩一
シンポジウムでは、休憩時間に会場から集められた質問への回答を中心に進められました。ポイントとなる質疑応答についていくつか紹介します。
- Q. 適格消費者団体が差止請求の対象とするのは、件数が集まったものを対象とするのか、それとも1件でも対象とするのか。
- A. 1件でも不当条項であると確実に考えられ、影響も大きいと思われれば対象とする。また、多数集まった場合は、できるだけ早く検討を開始し、訴訟なども想定して進めていく。
- Q. スポーツクラブなどは、大手事業者全部を是正対象としているが、なぜそうなったのか。
- A. スポーツクラブの場合は多くがモデル約款を使っていて似通っていたことから、是正項目も共通する点が多かったため。
- Q. 差止請求(是正協議)の流れは、情報収集-分析-申入れ-協議(訴訟)-是正までにはどのくらいの期間をかけているのか。
- A. 早いもので1年以内、長いもので2~3年かかっているものもある。
- Q. 今、問題になっている「杭打ちデータ改ざん」事例を、集団的訴訟制度にあてはめてみると、訴訟の対象となるのか、相手事業者はどこで、金銭的給付の考え方はどうなるか。
- A. 瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求になるため対象になる。被告は杭打ち業者ではなく契約関係のある販売業者で、補修に要する費用などを請求することになる。
- Q. 被害回復訴訟で、被害者の多数性は確認できるとして、統一約款を用いている同業者など加害事業者が複数にわたる場合、この制度は適用できるか。
- A. 多数性は、基本的には個々の事業者ごとに確認する。同じ約款を用いていても、複数事業者に対しまとめて訴訟を起こすことはできない。
- Q. 現在12ある適格消費者団体は、すべて被害回復訴訟を起こせる特定適格消費者団体となる見込みなのか。
- A. 特定適格消費者団体の認定を受けるための活動期間を満たさない団体もあるため、すべてがすぐに特定になれるわけではない。また、新たな要件も満たす必要があることから、制度施行の当初より認定を受ける団体は、そう多くはない見込み。
- Q. 被害回復訴訟の紛争の蒸し返し防止によって、消費者の個別な謝罪要求も免責されるのか。
- A. 被害回復訴訟は、そもそも金銭的な給付しか求められないため、個別の謝罪要求などを求められることはない。
セミナーチラシ【PDF 424KB】