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イベント等

「緊急シンポジウム みんなの力でやめさせよう架空請求・不当請求」開催報告

1.日時

2004年12月14日(火)18時~20時30分

2.会場

主婦会館プラザエフ 5階 会議室

3.内容

 架空請求・不当請求問題が急増し、社会問題化しています。そこで、架空請求・不当請求に対する関係業界・官庁の対応策を聴き、消費者のできる対策を考えあうとともに、実効性のある施策の必要性を広く社会にアピールするため、12月14日シンポジウムを開催しました。当日は消費者・消費者団体・事業者・行政・報道関係者など、定員を超える64名が参加しました。

 まず渡邊優一さん(国民生活センター相談調査部)から「架空請求・不当請求に関する相談の状況について」、架空請求・不当請求に関する相談が激増していること、相談者は「男性」「30代」「給与生活者」が多いこと、手法が変化している現状などについて報告いただきました。

 続いて丸山達也さん(内閣府国民生活局消費者企画課 課長補佐)から「政府の対策について」、携帯電話の犯罪利用の防止・預金口座の不正利用の防止・警察当局による取締り・広報啓発など、関係省庁が連携して対策にあたっている旨の報告をいただきました。

 パネルディスカッションは、コーディネーターに池本誠司さん(弁護士)、パネリストに渋谷闘志彦さん(総務省電気通信事業部消費者行政課 課長補佐)・親家和仁さん(警察庁刑事局刑事企画課 課長補佐)・岩本秀治さん(全国銀行協会業務部長)・西野茂生さん(ボーダフォン㈱渉外部課長)・唯根妙子さん(NACS日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費者相談室長)という多彩な顔ぶれをお迎えして開催しました。

 唯根さんからは、「消費者相談事例から見える問題点と対策要望」として、NACSで行った消費者相談から、携帯電話や銀行口座が「振り込め詐欺」のツールとなっており、広報・啓発に加え、こうしたツールに対して対策を行っていく必要がある旨についてお話いただきました。

 親家さんからは、「オレオレ詐欺」と呼ばれていた頃と比べて手口が多様化しており「振り込め詐欺」とネーミングを変更したこと、匿名性を利用した犯罪であり検挙が困難であること、対策チームをつくり情報を集約して被疑者グループを特定するなどしているが、発生抑止が重要であることなどをお話いただきました。

 西野さんからは、プリペイド式携帯電話の契約者確認制度・譲渡届出制度の導入など、電気通信事業者協会や電気通信事業者の自主的な取り組みについて報告をいただきました。

 岩本さんからは、不正使用口座の利用停止・強制解約や、不正口座売買の防止など、銀行業会における架空請求・不当請求対策についてお話をいただきました。

 渋谷さんからは、「振り込め詐欺に使われている電話番号を使用停止にできないのか」との声が多いが、通信の秘密と表現の自由との兼ね合いもあり困難であることについてお話があり、ただ、プリペイド携帯については利用者本人が確認できない場合の利用停止という考え方をとったことが報告されました。

 意見交換では、消費者・消費者団体・消費生活センター・弁護士会・警察・関係省庁・事業者などの連携の必要性が、それぞれの立場から意見として出されました。特に、公的機関である消費生活センターから、悪用されている口座番号や電話番号などの情報が当該機関にスムーズに情報提供されることが期待されることがポイントとして浮上しました。また、ツールの規制には世論の盛り上がりが重要であること、などについて話し合われました。

 最後にコーディネーターの池本さんが、47万件というのは異常事態であり、被害実態を集約する窓口を整備すること、金を振り込んだ後で取り戻すのは困難であり、ツールの問題への対応をすすめるとともに、法律での対応が必要であること、また私たち消費者がそうした動きをつくっていくことが必要、とまとめられました。

 シンポジウムの最後は、行政・事業者と消費者の協働によって「振り込み詐欺」をやめさせようという趣旨のアピールを採択し、終了しました。

緊急シンポジウム アピール

みんなの力で「振り込め詐欺」をやめさせよう。

 忙しい毎日の暮らしのなかに突然届く、身に覚えの無い料金を請求するハガキやメール。その文面には、すぐに支払わなければ「法的処置をとる」などの文言もあり、私たち消費者は不安にかられてしまいます。また、近親者の事故などをかたって、示談費用などとウソをつき、お金を振り込ませる「オレオレ詐欺」も私たちの不安・動揺をさそって金銭をだましとります。警察庁では、このようにだましたり脅したりして、口座にお金を振り込ませる詐欺を総称して「振り込め詐欺」と呼んでいます。

 「振り込め詐欺」の被害は急速に拡大し、警察庁の発表では今年1月から10月でその被害額は約222億円にも及んでいます。このような、人の不安感をかきたてその心理につけこむ詐欺行為を横行させておくわけにはいきません。

 私たちは本日のシンポジウムで、「どうすればこれらの犯罪を速やかに摘発できるか」「消費者ができることは何か」について考えあいました。そして、「振り込め詐欺」の2大ツールとも言われている電話と預金口座について、次のような対応が必要であると考えます。

<プリペイド携帯の本人確認の徹底>

 電話の中でも、本人確認が不十分であり犯罪に用いられることが多いプリペイド携帯について、「販売時の本人確認」「譲渡時の本人確認」「すでに販売されているプリペイド携帯の本人確認」が、早急にすすめられる必要があります。これらの本人確認を完全に実施するためには、事業者の自主的対応にゆだねるだけでなく法的義務付けが必要です。

<悪用されている電話の利用停止>

 さらに、プリペイド携帯に限らず、犯罪に悪用されている電話について、利用停止が行なえるようにするべきです。

<銀行口座の不正使用・口座売買の禁止>

 銀行口座の売買に関してはこれを禁止する法改正がすでに行なわれています。不正使用・口座売買に対して法律にもとづいた事業執行が徹底されるよう求めます。

<「振り込め詐欺」専門の相談体制の確立>

 今、消費生活センターは、架空請求・不当請求の相談に追われ、消費者相談の電話がかかりにくくなっています。架空請求・不当請求を含めた「振り込め詐欺」専用の相談窓口を国の責任で、至急設置することを提言します。「振り込め詐欺」への対応策についての広報とあわせて、この相談窓口の紹介を十分に行なってください。電話やメール、葉書きなどが届き、不安を覚えたときにすぐにつながる相談体制が必要です。「振り込め詐欺」事件を押さえ込むまでの間、土日や夜間も含めた相談体制を整備することが必要です。また、持ち込まれた相談情報から、悪用されている電話番号や口座番号・名義等について、関係機関への情報提供をすすめ、その対応に生かしてもらいたいと思います。

<私たち消費者にできること>

 私たち消費者にもできることがあります。まず、あわててこちらから連絡をとったり、指定の口座にお金を振り込んだりしないことです。さらにすすんで、消費生活センターや上記の「専門相談体制」ができればその窓口に、「振り込め詐欺」に悪用されている電話番号や口座番号を通報し、総務省・銀行・都道府県警などの関係機関に情報を提供してもらうよう要請しましょう。多くの消費者からの情報で、それ以上の詐欺行為ができないようにするのです。このような行政・事業者と消費者の協働によって、「振り込め詐欺」をやめさせましょう。

2004年12月14日
緊急シンポジウム「みんなの力でやめさせよう架空請求・不当請求」