消費者機構日本(COJ)は、消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進めます

差止請求訴訟

マッチングサービスの「ブライダルネット」を運営する株式会社IBJに対し、差止請求訴訟を起こしました。

 株式会社IBJ(以下、「IBJ」といいます。)は「ブライダルネット」の名称にて、消費者に対しインターネットを利用した異性紹介サービス業(いわゆるマッチングサービス)を運営しています。「ブライダルネット」の利用規約に不当条項があるため、差止請求訴訟を東京地方裁判所に起こしました。

1.差止請求の趣旨

  1. (1) IBJは、消費者との間で、インターネット結婚情報サービス利用契約を締結するに際し、消費者の中途解約を認めない旨の意思表示を行ってはならないこと
  2. (2) IBJは、前項の意思表示が記載された契約書、約款その他一切の表示を破棄すること
  3. (3) IBJは、その従業員らに対し、第1項記載の意思表示を行ってはならないこと及び前項記載の契約書、約款その他一切の表示を破棄すべきことを周知徹底させる措置をとること

2.差止請求訴訟を提起するまでの経緯

  1. (1) 「ブライダルネット」を利用している消費者から、途中解約すると返金もなく、解約を申し出ると即時にサービスが使えなくなるとの情報が当機構に寄せられました。
    当機構で規約を確認したところ、「消費者契約法第9条第1号に違反する平均的な損害額を超えるキャンセル料条項」が確認できました。
  2. (2) 当機構は、IBJに対し、消費者契約法第9条第1号に抵触する不当条項であると考えられる利用規約第11条3項の意思表示を行わないこと(規約から削除すること)を求め、2020年11月16日付で裁判外での申入れを行いました。
    2020年11月16日付「申入および問合せ」
  3. (3) これに対し、2021年12月11日に、IBJより利用規約第11条3項を変更するとの回答書が届きました。
  4. (4) 当機構は、規約の変更確認のためIBJのホームページ掲載の利用規約を確認したところ、2021年1月20日付で改訂されていました。改訂条項は、当機構が求めた旧利用規約第11条3項については削除がなされていたが、他方、退会の申出の通知がIBJに到達した日をもって退会となる旨の旧利用規約15条3項が改訂され、退会申出後、退会の効力が発生するのは、IBJに退会申出の意思表示が到達したときではなく、意思表示到達後の「メンバー期間満了日をもって退会となります」旨変更されていた(改訂利用規約15条3項)。かかる利用規約の改訂は、実質的には会員の途中解約を認めないものであり、返金を一切しないという従前の規定について言葉を変えて継続するものでした。
  5. (5) そこで当機構は、IBJに対し、2021年3月22日付で、改訂利用規約15条3項が消費者契約法第10条に違反している旨の再申入れを文書にて行いましたが、IBJからは回答がありませんでした。
    2021年3月22日付「再申入れおよび要請」
  6. (6) 当機構は、IBJからの回答がないため、回答のお願いの文章を郵送するなどIBJへ回答の依頼を継続しておりましたが、不調となりました。
  7. (7) そのため、当機構は、2022年4月6日付で消費者契約法第41条第1項に定める書面による差止請求を行いました。
    2022年4月6日付「差止請求書」
  8. (8) これに対し、IBJから、2022年4月12日付回答書をもって、「差止請求に応じる考えはありません」との回答がありました。
  9. (9) 書面による差止請求後、1週間余を経過しても差止請求の趣旨に添った措置が執られたことが確認できなかったため、2022年4月18日にIBJを被告とする差止請求訴訟を東京地方裁判所へ提起しました。(東京地方裁判所 令和4年〔ワ〕第9434号)
    2022年4月18日付「訴状」(抜粋)